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林家彬さん 経済学者~舵取りの手腕が問われる2010年

2009-12-31 22:39:52     cri    

 高度成長と過熱の抑制

舵取りの手腕が問われる2010年

 世界金融危機の発生から1年あまりが経ちました。2009年、中国の経済成長はV字型をたどり、GDPの成長率は8.5%になると予測されています。しかし、世界を驚かせる高度成長の影には、不動産価格の高騰に代表されるオーバーヒート現象も存在しています。


 全国主な都市の商品住宅価格の平均上昇幅はいずれも50%以上に達したと言われ、09年12月に発表された中国社会科学院の『経済青書』では、住宅価格の高騰により、全国85%の家庭はマイホームが購入できないとしています。
 世界的な景気低迷を背景にしながら、中国の不動産価格の高騰を誘発した原因は何か。今後の健全な経済成長を成し遂げる上で、いま、求められている対策は何か?
 また、中国のGDPは2010年にも日本を抜いて世界2位になると見込まれているが、このことは今後の中日の経済協力にどのような影響をもたらすのか?
 09年末、中国国務院発展研究センターの林家彬さんにインタビューしました。

■不動産購入、「投資財」から「投機財」へ

――まず、この一年の中国経済を全般的にどう評価しますか。

 金融危機の後、中国政府は迅速な反応を見せ、総額4兆元規模の景気刺激策を打ち出しました。一連の取り組みにより、景気が確実に回復したと言えます。最近発表されたPMI(購買担当者指数)、電力消費量、輸送量など実物経済にかかわる一連の経済データはいずれも上向いており、経済情勢は確実にV字型の回復を示しています。

 2009年、中国のGDP成長率は8.5%になる見込みで、年頭の「GDP成長率8%の確保」が確実になりました。主な先進国の経済が低迷する中、中国の目標達成には大きな意義があります。中国経済の回復は日本経済にとってもある程度、牽引力を発揮することができるでしょうし、その他の国に対する影響も大きいと思います。

――しかし、その一方、主要都市の不動産価格の上昇幅はわずか1年で50%も超えたというデータもありますが…

 不動産価格の上昇が今、大きな社会問題にまで発展してきました。その最大の原因は、金融危機対策として、緩めの財政政策と金融政策を講じた結果、大量の資金が市場に出回ったためです。経済学的に言うと、過剰流動性の現象が起きました。不動産市場、とりわけ、都市部の住宅はもはや「消費財」ではなく、「投資財」へと変質してしまいました。

――不動産価格の高騰には、政府の政策的な要素が影響しているとも言われていますが…

 確かにそういう面もあります。「政府救市」(政府がマーケットを救った)という表現もあるほどです。一説では、不動産関連産業が中国経済に占めるウェイトが全体の6分の1にも達しています。

 不動産市場の落ち込みは確かに景気の刺激にとってマイナス要因となります。それを考慮し、政府は中古住宅売買に関する税制優遇策などを打ち出しました。

 今、中国の不動産市場は投機性が非常に強い、それが一番大きな問題です。これから、中国の不動産市場を健全なものにするには、投機性を抑える必要があります。

■低所得層向け住宅の整備と不動産保有税の導入を

――居住問題の解決に向けた林さんの提案は?

 住宅は人々の日常生活に欠かせない基本的な消費財です。政府は不動産価格の高騰に対して、単に経済政策で対応するだけでなく、社会政策に組み込み、低所得層の人々の基本的な住宅ニーズに応えていく必要があります。そのため、日本でいう「公営住宅」のような住宅政策の導入、また、日本の「公団住宅」のような、公の経営による賃貸住宅の発展に力を入れる必要があります。

 さらに、不動産関連の税制改革も必要だと思います。今の中国は、不動産の売買にだけ取得税が徴収され、保有に関しては税金を課していません。つまり、不動産を保有するコストはゼロなわけです。投機目的、あるいは財テクをやる人たちにとっては、非常に都合がいい政策と言えます。ですから、不動産税制のほうも、売買の段階でかかる税金を保有段階で課税するように改めていく。日本でいうと「固定資産税」のような税制を導入する必要があると思います。

――これに関する政府の動きは?

 09年12月に、「不動産市場の健全化に関する国務院の意見」という公文書が発表されました。そのなかに、中古住宅の売買にかかる取得税に関する優遇措置の廃止が明記されています。

 また、住宅問題の解決に向け、向こう2年間、都市部の低所得層、あるいは住宅難世帯(総数約1500万世帯)を対象に、公営住宅あるいはその他の家賃補助などの政策を講じるとしています。そのほか、金融危機対策の一環として、公営住宅の建設計画もすでに打ち出されています。

――不動産保有税の導入案に対して、政府はどのような反応を示していますか。

 『第11次5カ年計画』の中では、この5年内に実施すると示唆する表現も見られましたが、残り1年でそれを実施する見込みは恐らくないだろうと思います。

 というのも、そういう不動産税を導入するには、色々な準備作業が必要だからです。たとえば、不動産に対する資産価格の鑑定、日本でいう不動産鑑定士というシステムの導入などです。さらに、個人財産の申告、それに対する政府関係機関の情報の把握、各機関での情報共有システムの構築など、様々な準備作業が必要です。いずれにせよ、将来的にはその方向に向かっていくと思われます。

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