「そんなことがあるはずがない。それにゾーバンはどうして僕にうそをつくのだろう。俺とは幼友達だというのに。そうか。ゾーバンはいまの貧しい暮らしがいやになって、いち早くいい暮らしがしたいのだろう。俺も金はほしいけど、友達をだますことはしないよ。でも、奴とはこれまで助け合ってきたからなあ。悪い奴じゃないことは確かだ。よし、なんとかしてゾーバンの目を覚ましてやろう」
ここまで考えたロージンは、ことは決まったとそのうちに寝てしまった。
次の日の朝。ロージは森に入って何と二匹の猿を捕らえてきた。そして猿にゾーバンの二人の息子と同じドーワとドーチョンという名をつけてゾーバンに黙って飼いはじめた。その後、暇があると猿にとんぼ返りなどの芸を教え、かなり出来たころに谷間に住んでいる親戚の家に預けた。
さて、それから数日たったある日、ロージは、金をはたいて町からたくさんの食べ物を買い、自分もうまい酒を作ったのでゾーバンに飲みに来るよう誘った。そして二人が飲んでいるとき、ロージが不意にいう。
「ゾーバンよ。うちには沢山の食べ物があるようになってね。雌牛は子牛を産むし、それに見てみな、おいしいお菓子もある」
「おお。ほんとだね」
「で、どうだい?今度、君の二人の息子を呼んできたらどうだい?こんなにあるんだ、うちじゃあ食い終わらないからさ。」
「そうか?じゃあ、そうさせてもらおうか」とゾーダンはいいながら、自分があの金のことでロージを騙したのに、ロージは今になっても何にも気付いていないことに安堵した。
こうして数日後に、ゾーダンの二人の息子がロージの家に遊びに行くことになり、その日はロージがわざわざゾーダンの家に迎えにきた。そして二日後にゾーダンが息子を連れ帰るため、ロージの家に行くということになった。
で、その日、ロージはゾーダンの二人の子供を連れて自分の家には帰らず、なんと二人の子供を谷間にあるかの親戚の家につれていき、三日間預かってもらい、その代わりにその家に預けていたかの二匹の猿を連れ自分の家に戻ってきた。
こうして三日後、ゾーダンが約束どおり、ロージの家へ自分の息子を迎えに来た。そして家に入ると、ロージが暗い顔をしている。それに自分の二人の息子の姿がない。
「うん?ロージ。どうしたんだい?そんな顔して?それに俺の息子はどこへ行ったんだい?あれ?ロージは猿を飼っているのか?」
これにロージはすまなそうな顔をしていう。
「ゾーダン、実はな。実は・・」
「どうしたんだよ。何かあったのかい?早く言ってっくれよ」
「実は、昨日少し用事があって町にでかけたんだよ。君の息子が果物だべたいというのでね。そして果物を買って家に戻ってきたんだが、どうしたことか、君の息子は家のどこにもいなく、この二匹の猿がいたんだ。そこで俺は猿にかまわず、家の周りやいつも登る山に探しに行ったんだが、どうしてもみつからない」
「息子たちはいったいどこに行ったんだ?」
「まあ、聞いてくれ。俺は、自分が外で君の息子を探している間に、もしかしらたら息子たちが戻っているのではないかと思って、家に入る前から大声でドーワ!ドーチョン!と、君の息子の名前を叫んでみたんだ。するとどうしたことか、この二匹の猿が駆け寄ってきてね。おかしいなと思って、ドーワ!ともう一度呼ぶとこちらの大きい猿がキーッ!キーッ!と答える。そこで、ドーチョン!と呼んでみると、もう一匹の小さな猿が、同じようにキーッ!キーッ!と答えるんだ。これはおかしいと思ってそれから何度もやってみたが同じこと」
「そりゃあ、ほんとうか?」
「ああ。信じないなら、君が息子の名前を呼んでみな」
「ええ?そんな・・」とゾーダンは半信半疑で猿たちを見つめたあと、「ドーワ!」と呼んでみた。すると大きい方の猿が「キーッ!キーッ!」と鳴いてゾーダンの側にきて踊りだした。
「これは・・?」とゾーダンは急にめまいがしたが、それでも何かの間違いだと思い、今度は小さな猿に「ドーチョン」と呼んでみた。すると小さな猿も「キーッ!キーッ!」と叫び、同じようにゾーダンの側にやってきた。ゾーダンはあまりのことに、地面に座り込んでしまった。
これを見たローゾ、「君の息子たちはいたずらだが、よくとんぼ返りなど難しいことをして人を驚かせたことがあるよね」
これにはゾーダン、ただ首を縦に振るだけ。
「じゃあ。この二匹の猿にそれが出来るかどうか、やらせてみよう」
ロージはこういってから猿にむかい「ドーワとドーチョン!得意のとんぼ返りを父さんにみせてみな!」といって手まねすると、二匹の猿はその場でとんぼ返りなどを始めた。
これにゾーダンは、気を失いそうになった。
「おい!おい!ゾーダン、大丈夫か!しっかりしろ!」
このロージの声にゾーダンはやっと我に帰り、涙を流し始めた。
「な、なんということだ!どうして俺の息子が三日たってから猿にかわったんだ!?天よ!こんなことってあるのか!」
そこでロージは待ってましたと、不意にニヤニヤしてこう言った。
「だろう?君はこれを信じるかい?」
「え?ロージ!いったいどういうことだ?」
「おなじことさ!だって君が木の箱に入れておいた金が三日たって腐った棒切れに変わったなんて、誰が信じる?」
これにゾーダンははっとなった。そしてしばらくニヤニヤしているロージの顔を見つめていたが、急に顔を赤くしてやっと口をあけた。
「君は、君は知っていたのか?俺が金を独り占めにしたいばかりに・・隠したことを・・」
「だって、金が腐った棒切れに変ったっていってもおかしいだろう?」
「そうだったのか!俺は、俺は、幼友達でこれまで助け合ってきた君になんと言うことを・・・すまない。すまない。ロージ。この俺を許してくれ・・。
あの金はまだ使わず家においてある。さあ。いまから俺の家へ行って仲良くわけよう。ロージ。欲張りになったこのゾーダンを許してくれるか?」
「ははは!わかってくれたか、ゾーダン。元の君に戻ってくれたんだね。俺は君を許すよ。安心しな」
「ありがとう!ロージ。で、俺の息子は?」
「ああ。心配ないよ。谷間にある俺の親戚のうちに預かってもらってあるから」
「そいか。すまない」
ということになり、二人はそれから谷間の家へ行ってゾーダンの二人の息子を連れ、その足でゾーダンに家に向った。
このことがあってから、ロージとゾーダンの二人は、以前よりも仲良しになったという。はいはい。よかったわい!
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