このほど北京で中国の大手新聞社「チャイナデーリー」と日本のNGO組織「言論NPO」が共に実施した第7回中日関係世論調査の結果が発表されました。それによりますと、中国人と日本人のお互いに対する好感度はいずれも低下し、史上最低にまで落ちたことが分かりました。中国側の対日好感度は28.6%となり、去年より10ポイント下落しました。一方、日本側の対中好感度は20.8%に下がったということです。
これを受けて、インターネットでは、「好感度」ではなく、「悪感度」というキーワードで報道されていますね。これは中日の交流事業に携わっている人にとっては、非常に残念な結果になりました。いっそうプレッシャーがのしかかってきます。報道では、中国人の対日好感度に影響を与えた理由に、去年の釣魚島の漁船衝突事件や福島原発の危機などをあげています。特に、福島原発の問題は未だに解決されず、日本国内でも原発反対の声が高まっています。
今回の調査結果はちょっと残念ですけど、細かく分析してみると、中国人が日本に対する態度はより理性的になったと専門家は見ています。まず、中国側の回答者のうち、「中日関係は重要だ」と認めた人は83.1%で、8割以上もいます。また、中日関係の重要性を認めた学生と教師は88.6%で、なんと9割近くで、一般人を上回る結果となりました。
今回の輿論調査は、1540人を対象に中国で北京、上海、成都、瀋陽、西安の5都市で行われたんですよね。そのほか、北京大学や清華大学、中国人民大学、中国国際関係学院、外交学院という5つの大学で1000人の大学院生と青年教師を対象にも行われました。調査結果では、中日両国の国民の相手国への好感度は落ちたものの、中国の若者、特にネット利用者は中日関係をより冷静に見ていることが反映されたものになりました。
つい最近、日本の横浜市では、育鵬社の編纂した歴史教科書が採用されました。これに対し、中国のインターネットやブログでは、反対の声があがりました。しかし内容はみんな素直に不満の気持ちを表したもので、日本製品のボイコットや反日デモの提唱など、扇動するような言論はほとんどありませんでした。2005年の春に中国で発生した反日デモの引き金は、日本の文部科学書は右翼の歴史教科書を可決したことにあります。当時に比べると、いまの中国の人々は本当に物事を客観的に見るようになっていると見られます。
また、去年の第2四半期、中国のGDPは日本を追い越して世界2位になりました。これを受けて、西側メディアは「中国経済の一里塚」とか、「世界ナンバーワンの経済大国に迫る」などと、大げさに報道していましたが、中国国内の報道は非常に理性的でした。「世界2位になっても、人口の13億で割ると、まだまだ低いレベルにある」と冷ややかに受け止めています。1990年代から、中国経済は急速に発展してきましたが、一方、日本経済は苦しい20年を送ってきました。中国に追い越されたことを受け、日本では中国脅威論というものが横行しています。中国の一面しかとりあげていないことが原因だと思います。
ところで、1980年代、世界一流の家電製品や技術と言えば、真っ先に日本のブランドを思い出しました。中国人も日本の製品に対しては非常に憧れを持っていました。しかしここ数年、中日間の経済貿易は全体的に伸びているものの、中国の対外貿易に占める割合が減少していますね。中国商務省の統計によりますと、中日の貿易額は中国の対外貿易に占める割合、1985年は30.4%でしたが、2001年は17%、2008年は10.4%、去年、つまり2010年は10.02%に落ちてしまったということです。
一部のネットユーザーは、「いいニュースに対しても、悪いニュースに対しても、中国の人々が日本への反応が鈍感になっている」と見ています。実は、鈍感というより、もっと包容的になったと思いますね。この間のサッカー女子ワールドカップでは、なでしこジャパンがチャンピオンに輝いたことについて、インターネットの書き込みでは、多くの中国人は同じアジア人としての喜びを素直に伝えました。また、日本の成績を見て、中国のサッカーチームはもっと反省しろという意見もありました。
経済発展によって、生活のゆとりがあるから、心にゆとりを持つようになったと言えますね。そして世界の情報入手が簡単になったこともあげられますね。中国では、対外開放のおかげで、国を出て外国へ行ったりして、日本を訪れる人も増えていますね。人々の世界観や国際意識も変化しています。これまで中日間にいろいろあったんですが、以前は中日関係といえば、正直みんな非常に敏感でした。しかし今は昔より、落ち着いてお互いの相違点を認めるようになったのではないかと思います。
確かに、心理的な距離は微妙なものですね。時には一歩離れてみてはじめて、自分のことも相手のこともより客観的に見られます。中国と日本、または中国人と日本人、むしろ相手のことを特別視せずに、ただの隣国、お隣さんとして付き合えば、順調に行くかもしれません。世論調査の好感度は下がったものの、これをきっかけに、お互いのことをより客観的に見ることができるなら、決してマイナスではありませんね。どのみち両国の共通利益は緊密になっているのは事実ですから、ウィンウィンの関係になれば多くの人にメリットがもたらされるのではないでしょうか。
いま、北京の街頭では、至るところに日本ブランドの看板を見ることができますし、日系ファッションを身に纏った中国の若者の姿も沢山見かけます。一方、日本では、中国製商品は日常生活に欠かせないものになっています。認めるかどうかは別として、両国の存在はお互いの生活に浸透していますね。
一衣帯水の中国と日本、近くて遠い国ともよく言われています。地理的な距離は変わらないものの、心理的な距離、いわゆる「好感度」は決まったものではありません。今年は残念ながら、お互いの好感度が落ちてしまいましたが、これをきっかけに、相手のことをもう一度見直せば、今後の好感度につながります。好きかどうかはいろいろと憶測するより、一歩足を伸ばして相手の国へ行ってみて、ありのままの日本と中国を肌で体験してみれば、その気持ちこそ、真の「好感度」になるでしょう。(「イキイキ中国」より)
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