昨年、中国のGDP・国内総生産は10.3％増加し、中国経済は、ここ数年の勢いを保って高い成長を続けています。我々一般の人間には、そうした経済成長を支えたのは不動産や自動車市場の好調ぶりだと思えるかもしれませんが、実は、その背後に、とても大事な要素があります。資本市場、これは株式などの証券市場を指すことが多いようですが、企業の融資で大きな役割を担っているものです。

　中国では1978年から改革開放が始まりましたが、その中での経済・金融体制の改革では、欧米諸国など資本主義国から「有価証券」というものが導入され、試みとして、1990年代初頭、上海と深センに1ヵ所ずつ証券取引所を設置しました。しかし、中国の経済制度は社会主義の公有制、国有が中心なので、株式市場を取り入れていいのか、疑問視する声もありました。そのとき、中国で「改革開放の総設計士」とも呼ばれていた鄧小平氏が「社会主義に向いているかどうか、やってみないとわからない」と決めたことがきっかけで、今日まで発展してきました。

　いろいろな改革、調整を経て、ちょっとした成果が見られるようになりました。上海、深センの2つの市場に上場する企業の数は、発足した最初のころは14社でしたが、今は2000社を超えています。また、株式市場の時価総額は世界第2位、商品先物の取引量は世界1位になっています。それよりも具体的な成果があります。中国証券監督管理委員会の尚福林議長の話です。

「資本市場を通じて、投資者は企業の成長による恩恵を受けることができます。また、社会のいろいろな資源が優れた企業に集中し、中国の金融業がさらに活力を持つことになります」

　資本市場は、一般市民の生活にも影響を与えています。今、中国の株式市場の取引口座を持つ投資家は1億3000万人に達するそうですが、中国の人口は13億人というので、10人に1人、株の売買をやっているということでしょう。そんな1人、北京のテレビ局で働く李さんは、次のように話しています。

　「株の取引で、今は月5000元くらい儲かっています。これは、私の月収の半分ですよ。ただでもらったものみたいに思っています。以前は、あまり余裕がなかったので、買い物するとき、いつも迷ったりしたのですが、株の売買でお金をもうけるようになってから、気に入ったらすぐ買ってしまうのです。株の売買によって、今までより生活を楽しむことができました」

　ところで、資本市場は、企業への資金融資の手段として、中国企業の成長を後押ししてきました。統計によれば、企業の株や債券への資本市場の融資はこの20年間でおよそ6兆元(およそ75兆円)に達しています。また、資本市場は、産業構造調整などの場ともなっていて、中国企業の合併や再編の40％以上が、資本市場を通じたものです。

　中国の経済や金融、企業の発展、さらには一般市民の生活にとっても、重要な役目を担っている資本市場ですが、中国の場合は、そもそも経済と人口の規模も大きいし、市場を運営する中で様々な課題が出てきます。また、社会主義の公有制の部分が大きい中国の経済制度ですから、どこか変わるとまったく違う方向に向かうかもしれません。ですから、資本市場の管理、監視が大事と思われます。

　上海と深センに証券取引所が設置された後、中国は直ちに証券監督管理委員会を設立しました。国務院も証券委員会を設けて、証券市場の健全な発展を確保してきました。それに、1998年に発表された「証券法」が、法律の形で中国の資本市場のいろいろなことを定めました。この点について、中国証券監督管理委員会の尚議長は、このように述べています。

　「資本市場につながる利益は大きく、しかも直接的なものです。それで、市場の公平、公正がほかより注目されています。中国の資本市場は発足して間もなく、転換しようとしている段階にあり、市場のメカニズムがまだ未熟で、一部の矛盾が、市場そのものによって解決されることはまだできません。つまり、市場はその効力を失うことがあります。そういう場合、法律や管理、監督に関連する機関が一緒に助けてあげて、その効力を回復させる必要があります」

　さらに、中国の資本市場の次の発展について、尚議長は次のように話します。

　「株式市場のシステムをさらに整備し、メインボードやベンチャーボード、場外(ばがい)市場を含む健全で効率の高い市場システムを構築します。同時に、会社の債券市場を大きく発展させ、債券融資を、直接融資の拡大にさらに活かしていきます。そして、リスク管理などに対する先物市場の機能を発揮し、先物市場と現物市場の協調を促すことも必要です」(編集・翻訳：鵬)