インドの報道機関は、国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者が射殺されたことに、焦点を当てています。シン首相も事態の発展に歓迎の意を示したと同時に、2008年に起きたムンベイ・テロ事件の組織者の取締につながることを期待しました。これに対して、インドの宗教や政治団体は冷静さを保っており、イスラム教徒は慎重な対応を示しています。
インドは宗教や種族が多く、多元文化の国です。12億人のうち、ヒンズー教徒が82%占め、残りの15%はムスリムやその他の少数教派、種族が占めています。
インドでは、昔から宗教対立の問題を抱えています。国土が三角形の形をしているインドは、それぞれの地方で宗教や種族の分離独立主義の問題があります。西北部ではインド支配下のカシミール地区のムスリム分離独立主義の活動が活発化しています。北部では、1992年のモスク立ち退きをめぐり大規模な衝突が起きました。南西部では、2008年にムンベイでテロ襲撃事件が発生しました。ビンラディン容疑者の射殺について、ニューデリーの一部のムスリムの学生は「アルカイダのテロ行為が間違っていることはいうまでもない。しかし、だからといって、テロリズムをイスラム教と結び付けることも間違っている。事実上、テロリズムの勢力を育てたのは、イスラム教ではなく、アメリカをはじめとする西側諸国の政策だ」と話しています。
インドでは、ヒンズー教徒の人数が最も多いですが、昔からの原住民ではありません。16世紀、イスラム民族が入り、イスラム教が広がり、2つの宗教の争いは激しくなる一方でした。近代に入り、イギリスの殖民地となり、2つの宗教の衝突は植民地支配に利用されました。インド、パキスタンがそれぞれ独立した後も、依然解決できないでいます。冷戦後、アルカイダなどのテロ組織の勢力が強くなったことで、インド国内の安定も脅かされていました。インドはこの時進退きわまった立場に立たされていました。テロ取締を利用して、主権がアメリカに脅かされることを懸念する一方で、アメリカの力を借りてパキスタンを抑え、インド支配下のカシミール地区での地位を強固にしようと図っていたからです。さらに、東と西の隣国はいずれもムスリム国です。このことから、イスラム運動などに関する問題に対して、インドは従来から慎重な態度を取っています。
国内では宗教問題が深刻なものの、ムスリム組織はアルカイダを含めた国際テロ勢力に加担していません。9・11事件の後、多くのムスリム団体がテロリズムに反対する声明を出しました。
インドでは宗教問題は、終始敏感な問題です。政治家は公開の場では、出来るだけこの問題に触れることを避けています。そして、アルカイダのテロ活動に触れる際も、出来る限りテロリズムと過激勢力を、イスラム教と結び付けないようにしています。
ビンラディン容疑者が射殺された後、インドの報道機関は「インドとアメリカは完全に異なる国家だ。インドは、反テロの問題でアメリカに習ってはいけない。テロリズムと一般の過激組織を区別すべきである。国内の各教派の団結を目指して最善を尽くすと共に、ビンラディン容疑者の死後、新しいテロ襲撃事件の発生防止に、警戒を高める必要がある」としています。(朱丹陽)国際・交流へ
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