河南省や湖南省など中部地区の6つの省と、商務省など中央政府機関が共同で主催した第2回中部地区投資貿易博覧会が、先月末河南省の省都鄭州市で開かれました。第2回だというのに、海外の100以上の国と地域から7000人を超える政府関係者やビジネスマンが参加するなど、まずは規模の大きさに驚きました。それと中部地区は、発展する東部沿海地区と、発展の必要が叫ばれている西部との間に挟まれて、これまではどちらかと言うと埋没してしまいがちだったのですが、この博覧会を通じて「中部地区を台頭させたい」という強い気持ちが伝わってきました。
4月26日に行われた開幕式には、呉儀副首相やシンガポールのゴー・チョクトン前首相、それに香港特別行政区の曾蔭権行政長官らも出席しました。開幕式での挨拶で薄熙来商務相は、「去年湖南省で開かれた第1回に続いて、再び呉儀副首相がこの博覧会に参加したということは、中央政府が中部地区の台頭を推進していくという強い決心を表したものだ」と述べました。
出席者を見ると、錚々(そうそう)たるメンバーで、これまで「西部大開発」といった言葉は、良く聞かれましたが、「中部地区を台頭させよう」という声はそれほど強く無かったと思いますが、地元から中央政府に対しては、大分前から「中部地区の振興政策を国の政策の中に位置づけて欲しい」という要望が出されていましたが、3年前に全人代での政府活動報告の中に初めて盛り込まれました。そして去年湖南省で第1回の中部地区投資貿易博覧会が開かれ、そして今年になって国家発展改革委員会の中に「中部地区台頭工作弁公室」が設置される事が決まりました。最近になって本格的に動き出したと言えるのではないでしょうか。
今回の博覧会を通じて国の内外から投資を受け入れたり、国内での取引や海外への輸出を強化したりする。その事によって、産業構造を転換するというのが、一番の狙いのようです。例えば河南省を例にとって見ますと、人口が1億人近い大きな省で、食糧の生産基地であり、また石炭や石油、アルミニュームなど重工業も発展しているんですね。2005年までの5カ年計画期間中のGDP成長率は、年平均で11%を超えており、順調に経済は成長しています。但しその一方で、公害対策が遅れ、エネルギー多消費型の産業が多いといった課題を抱えています。このため今の産業構造を省エネルギー型やハイテク産業に切り替え、また公害対策なども強化して行こうとしています。
会場となった鄭州市の国際コンベンションセンターはとても広くて、色々な展示ブースがありました。河南、湖北、湖南、山西、安徽、江西という6つの省の展示場がメインですが、この他に、香港やマカオなど大陸以外の企業のブース、それに河南省鄭州に進出している日本の日産自動車との合弁企業のブースもありました。そんな中で興味を引いたのは、国際アニメ展示会です。
中国では中国独自のアニメ産業の振興を図ろうと動き出していますよね。ですから自国で制作したアニメを漫画愛好家に紹介するという形ではなく、ビジネスの面で外国のアニメ制作会社などと協力を進めることが必要になってきています。今回の国際アニメ展には日本の企業も出展していましたので、取材をしました。まずは、日本の漫画作家600人以上のマネージメントやプロモーションを行っている老舗の日本漫画社が、中国の企業と共催したブースです。荻野宏社長に出展の狙いについて話しを聞きました。
「これまで中国のプロダクションにはアニメ制作の下請けをお願いしてきたが、中国の技術が高まってきた上に、アニメに対するニーズも強まっている。また中国政府が去年の9月から自国のアニメ産業育成のため海外のアニメの上映を規制するようになったので、今後は中国企業と共同制作をする方向で協力を進めて行きたい。今回の展示を通じて、共同制作の話や日本に中国の若い人を招いて漫画家を養成するような話が具体化することを期待している」
日本関連のブースのもうひとつは、JETRO日本貿易振興機構北京センターが出展していました。JETROと言えば、商品の海外への輸出や輸入が中心でしたが、最近は文化産業の海外進出にも取り組んでおり、日本動画協会に加盟しているアニメや漫画の製作会社54社の作品を展示していました。JETRO北京センターの吉川明伸さんへのインタビューです。
「日本のアニメ産業で中国に進出している企業はまだ少ないので、まずは中国のビジネスマンに日本のアニメを知ってもらうために展示会に参加した。これを第一歩として相互理解を深め、日中合作へと発展させることが出来れば良いと考えている。中国ではアニメ産業を振興させるという動きが強まっているので、自治体の人や日本のアニメの関連商品を売りたいという人達が、早速相談に訪れている」
博覧会事務局の資料によると、中部地区のアニメ産業の独自制作の作品数は、全国の半分以上を上回っていると書かれていました。ただしアニメ展に出展した日本の関係者は、中部地区の実態を知った上で出展したとい言うよりは、中央政府が強く支援している展示会が開かれるので出展したというのが実情でした。中部地区の実態についてはこれからの交流を通じて把握して行きたいという段階のようです。日本の漫画関係者の話では、これまで日本との協力関係が深い北京や広州などでは、人件費が高くなりつつあるので、比較的コストが安い中部地区との関係強化に期待を寄せる声も出て来る可能性があると話していました。
アニメ産業の分野で中日協力が深まり、それが中国のアニメ産業の発展に結びついてくれることを期待したいですね。閉幕式での報告によると、今回の博覧会の商談などでは、6つの省は、外国企業との間で合わせて196項目に上る直接投資に関する契約を結び、その契約額は123億ドルの上ったという事です。この他にも国内企業との契約もありますから、十分な成果を上げる事ができたと主催者側は評価しています。中部地区が、東部地区の発展を受け継ぎ、西部地区への橋渡しをしてくれることを期待したいです。
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