北京から飛行機で2時間、安徽省黄山市に到着したのは、清明節(4月5日)の夜でした。北京のカラっと乾燥した空気と違って、湿気が鼻を通して体に入ってきます。その瞬間、大自然を身近に感じ、ほっと深呼吸を一つしました。
案内してくれたのは、黄山の町で育ち、現在は北京でお茶のビジネスをしている洪志さん(40歳、男性)。4月から6月の間は雨が多い時期なのですが、天気予報によると翌日は晴天ということで、早速、茶摘みと製茶の体験取材を手配してくれました。
富渓郷光明村長塢
翌朝、6時に起床し、車で2時間。富渓郷光明村長塢という小さな山村に着きました。辺り一面に生い茂るいろいろな草木に囲まれ、村の家が静かに佇んでいます。そんな村の真ん中の道を車が抜けていきます。どこにでもあるような普通の村でした。
黄山毛峰茶 ©MORI Kiyoshi |
4月始めから茶摘みが始まっていて、農家の人びとは通常朝6時に茶畑に出かけます。まだ採れる量は少ないものの、だんだん芽が伸びる茶樹が多くなってきて、明け方から日が暮れるまで働き続けだそうです。
茶摘みを教えてくださったのは、40代の女性、鄭さん。いかにも畑仕事に慣れているといった農家のお母さんならではの暖かい眼差しと満面の笑顔でした。到着すると、私たちには、早速、竹細工の小さな籠が渡され、摘んだお茶を中に入れるようにと言われました。
お母さんの後について家を出ると、入れ違いに朝一番に茶摘みに行った人々がもう帰ってきました。長い紐を首に掛け、籠をお腹の前にぶら下げているオジさんが籠の中の採れたての茶葉を見せながら、「1時間でこれくらいしか採れなかったよ」と大きな声で言いました。籠の中を覗く と、生の黄山毛峰の芽が初めて目に入ってきました。やや曲がった筆先のような形をしていて、長さは1センチちょっとでした。
「葉っぱが全くないだろう、これで最上級の茶を作るんだ」とオジさんは宝くじにでも当たったような上機嫌な笑顔で説明してくれました。その響きわたる声にひかれてか、村人が何人か集まってきました。中には、コップを持ったままのおじいさんもいます。「この茶、うまいよ!」と誇らしげにコップに入ったお茶を見せながら、金歯をむき出して言いました。
お茶は、朝から人々の生活に登場します。摘む人も飲む人も、共にお茶に関わり、共に晴天の太陽のような笑顔で、新しい一日を迎えていました。(文章:王秀閣)
| ||||
© China Radio International.CRI. All Rights Reserved. 16A Shijingshan Road, Beijing, China. 100040 |