遺跡の名前にちなんで牛の像が置かれている
本日は、市内からバスで30分ほど走り、古代の銅採掘の遺跡を訪ねました。
「金牛洞古採鉱遺跡」は、銅陵県新橋郷鳳凰村にあります。この辺りまで来ると、にぎやかな市内とはうって変わって、すっかり長閑な田園風景が広がる農村地帯になります。
あまり人影もなく遺跡の存在を示す看板がなければ、気づかないほどひっそりとしています。
この金牛洞古採鉱遺跡は、80年代に、この地に鉄鉱資源があることがわかり、採掘を開始したところ、昔の採鉱の跡と採掘道具が出土したことで発見されました。他にも陶器でつくられた生活用具も出土し、それらの調査の結果、春秋時代のものと推定されました。
春秋時代の銅採鉱の遺跡
このため1992年、銅陵市政府は採掘を停止し、遺跡を修復し、正式に一般公開される遺跡となりました。実は、銅陵とその周辺地域では、このような採鉱の遺跡は数多く発見されています。あまりにも多くのものが出土するため、保存のために再度、土の中に埋められた遺跡もあります。
最近は、数ヶ月に一度は、「中国で新たな遺跡が発見された」、また「考古遺物が発見された」というニュースがあります。これだけ発掘調査が頻繁に行われるようになったのは、やはり経済が豊かになってきた証拠ではないかと思います。しかし、保存方法や、展示のレベルはもうひとつといったところ。今回はガイドの案内や通訳もあり、より深く知ることができましたが、説明文や持ち帰れるパンフレットなどは何もなく、わずかな説明も中国語のみです。昨日、訪れた銅陵市博物館も同様です。もちろんまずは、国内の知名度を高めることが先ですが、できることなら、今から外国人向けのサービスも同時に準備してくれるといいなと思います。インターネットが広がった今なら、例えば、予め対応した多言語の音声ガイドを無料で配布することも可能です。北京でもこのようなサービスが始まっているようですが、こういった小規模の場所でも有効だと思います。中国の方は、規模、数の多さに重点を置きますが、案外、小規模でも、優れたサービスの提供は海外では歓迎されると思います。世界には考古ファンは大勢いるはずですから。むしろそのサービスで突出すれば、海外でも案外早く知られることになるのではないでしょうか。
さて、次の取材先は、牡丹栽培で有名な観光スポット、鳳凰山風景区です。
伝統的なレンガ造りの家々の中で、ひときわ目立つ近代的な住宅
牡丹の見ごろは4月から5月なので、今回はその美しい姿を見ることがきませんでしたが、風景区内には、牡丹の栽培地が広がり、生産に力を入れていることが十分感じ取れました。
レンガ造りの昔ながらの平屋の間に、真新しい住宅を見ることができます。淡いピンクや水色の外壁をした近代的な住宅には、「農家楽」という大きな看板がかけられています。これは今、中国国内の多くの農村地帯で見られるものです。発展した都市に住む人々が、休日に農村で出かけ、農家に泊まったりしてのんびり過ごすことが大人気なのです。これも農家の重要な収入源になっています。多くの観光客を迎えるため、農家も家を新築したり、改築したりしています。
ここには、牡丹のほか、見所が2ヶ所あります。まず1つは「相思樹」と呼ばれる、2本の樹が合さり1本になった見事な大木があります。この樹にまつわる1組の男女の悲恋の物語もあり、いっそうこの樹を神秘的なものにしています。この悲恋については、なんだか他の観光地でも聞いたことがあるようなもだったのですが、確かに物語を聞いてから、樹を見るとなんだか物悲しく見えるから不思議です。
そして2つ目は、滴水滝と呼ばれる滝です。農村からまっすぐ伸びた道を2キロほど歩くと、やがて険しい崖が現れ、その頂上から細く長い滝が流れ落ちています。眺めも素晴らしかったのですが、よりリラックスさせてくれたのは、その滝の流れ落ちる水の音でした。
インタビューに答える外事所の李映紅氏
4、5月になると、牡丹が満開となり、下には牡丹、上には清らかな滝といった美しい景色がのぞめるそうです。このシーズン期、農家一戸の収入は、1万元(およそ13万円)にものぼります。さらに村では、今後は牡丹以外の花も植え、年間を通して楽しめる場所に開発し、観光客を増やすことを目指しているそうです。
最後は、銅陵市の海外との交流の窓口となっている外事所の李映紅氏をインタビューしました。日本との交流にはすでに長い歴史があり、山口県周防大島町と友好都市関係を結んでいます。「今後の日本との交流に何を期待しますか?」との問いに、「経済と人材、そして観光分野の3つの交流を強化したい」との答えをいただきました。これは日本としても同様でしょう。特に観光分野は日本側も期待する部分でもあります。実は銅の都として、宣伝している銅陵ですが、揚子江河イルカ(淡水に生息するイルカ)が見られる場所でもあります。日本人にとっては、「イルカウォッチングツアー」といった観光コースのほうが人気が出るかもしれません。あるいはイルカ保護の面でも両国の交流が可能性が広がります。
他にも世界11カ国の都市と友好関係を結んでおり、地域の協力をすすめています。どうしても国家間の交流というと政府要人や、首都ばかりのニュースが取り上げられますが、実はこうした中小都市の交流が未来の可能性をつくります。例えば、大都市へ行かなくても、外国人との交流手段がある、海外の知識を吸収できる手段がある、仕事で世界を目指すチャンスがあるというのは、若者にとって非常に魅力的であり、結果、地元を離れる若者は少なくなるのではないでしょうか。今後の取り組みもぜひ、注目していきたいと思います。
さて、明日は取材最終日となります。どんな銅陵の姿が見られるのか楽しみです。(取材/吉野綾子)
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