北京オリンピックの水泳会場となる国家水泳センター、愛称水立方が、「鳥の巣」についで、北京オリンピックで二番目に多い42枚の金メダルが決まる競技場です。
オリンピック開催期間中、「水立方」では、競泳や、飛び込み、シンクロナイズド・スイミング、水球などの競技が行われることになっています。
「水立方」は、北京オリンピックのメインスタジアムである国家体育場愛称「鳥の巣」に隣接しています。その名のとおり、立方体の形をしています。この四角形は「鳥の巣」の丸い形とは対照的で、中国の伝統文化の中で言われる「天円地方」、つまり、天は円く、地は四角形であるという古代中国の宇宙観を表しています。「水立方」の設計は、中国とオーストラリアの建築家が共同で行なったものです。館内にはあわせて1万7000人の観客を収容することができ、そのうち、固定席は6000席、オリンピック開催に備えて特設された臨時席は1万1000席あります。
「水立方」は、水中の気泡をイメージした膜を組み合わせた外壁が特徴的です。建築家のちょっとした遊び心がわかりますね。高さ31メートル、縦横それぞれ177メートルの外観は、水の分子構造をモチーフにした大小約3000個の膜で覆われています。光が当たるとこれらの膜は水の泡のように見え、とてもソフトな印象です。特に、夜になると、室内の光線がこれらの水色の膜から透けて外に発散し、スタジアムの外から見ると、まるで透き通った青い色の水晶を鑑賞しているような印象を受けます。これは、鉄骨むき出しの隣りの「鳥の巣」と見比べると、とても対照的です。
さて、この水泡をイメージした「水立方」の独特な外観は、一体どんなものでできているのでしょうか。それには、エチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)という2層構造の高性能プラスチック・フィルムが採用されています。触るとブヨブヨするような感じに見えますが、実は非常に丈夫な材料です。大人数人が上に乗って飛んだり跳ねたりしても破れないといわれています。厚さ約3.7メートルの壁と、厚さ約6.7メートルの屋根には、それぞれの外側と内側にETFEの膜が張ってあり、中の空洞部分は換気に使われます。この設計によって、建物は巨大な温室のようになっています。建物を暖める必要がある場合は、暖められた壁の部分の空気を内部の空間に循環させ、反対に冷やす必要がある場合は、冷たい空気を地表から吸い上げて屋根から排出するのです。また建物は、太陽光をよく通す構造になっているため、晴れた日には日光の99%が館内に届き、電力の消費を節約できるとともに、プールの加熱にも利用されます。環境保護の面から言っても、「水立方」はなかなかの出来だといえますね。
「水立方」は北京オリンピックの競技会場のうち、唯一、香港・マカオ・台湾同胞、および海外にいる中国人による資金提供で建設されたものです。資金提供者は10万人に上るということで、オリンピックという中国人百年の夢をみんなで一緒に実現しようという思いの表れなのでしょう。
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