今年1月、中国山東省の済南で開かれた飛び込みの北京五輪選考会。女子3m飛び板では何といっても、この選手に目が奪われた。微笑みを浮かべながら板に立ち、踏み切って飛び上がり、優雅な宙返りと捻りを見せると「静かに」入水…「完璧の至り」といっても過言ではない一連の動作をいとも簡単に成功させ、観客席を沸かせる。

　中国の女子飛び込みのエース、郭晶晶(27)。北京五輪後の引退を決意している彼女は、祖国で開催されるオリンピックで最高の「締めくくり」をするために、今、練習に励んでいる。

　かつて周継紅・高敏・伏明霞・熊倪・田亮などの世界チャンピオンを輩出し、現在も「ドリームチーム」と称される世界トップレベルの中国代表。その中で、北京五輪の金メダル獲得が最も確実視されているのが、エース郭晶晶の3m飛び板とシンクロ板だ。

　国内では、彼女のことを「領軍人物(中国軍団を率いる人物)」とか「中国女子代表の『あねご』」などと呼んでいる。これについて本人は、「中国チームには優秀な選手がいっぱいいて、皆同じ。私は別に特別ではない」と、淡々と否定する。

　この中国女子代表を引っ張る「あねご」に、北京五輪に対する思いを聞いた。

　Q(記者)：試合に臨む郭晶晶さんは、いつも顔に微笑を浮かべているイメージですが、生活の中でも、やはり楽観主義ですか？

　A(郭晶晶)：まあ、そうですね。やはり生きているうちは、ハッピーにしたほうがいいじゃないかと思いますし、皆そうしてると思いますよ。毎日、悩んでばっかりしていると、何にもできないじゃないですか。

　Q：いつもオシャレで、ファッションリーダーでもある郭晶晶さんですが、ファッションは、お好きですか？

　A：女の子ならファッションに興味のない人はいないでしょう。

　Q：郭晶晶っていったいどんな人かって、ファンの方から質問があったんですけど。

　A：私は、どちらかというと簡単な人だと思います。何かについてあんまり深く考えることもしないし、「いま」を大事にして「明日」を楽しみにしている人間です。実は、北京オリンピックが早く、できれば明日に開かれればいいのにって思っているんです。ワクワクしているんです。

　Q：北京五輪には、どういう気持ちで臨むつもりですか？

　A：実は、この2、3年、若手選手、というか私より年下の選手が、ものすごい勢いで成長しているんです。とくに女子3m飛び板での競争が激しい。でも、そういう、後ろからどんどん迫ってくる相手がいるからこそ、体の中に潜在している力が引き出されてくるんです。それで、気を集中してベストを出すことができると思うんです。

　Q：それらの若手選手と比べ、勝る点は何だと思いますか。

　A：これまで積んだ経験だと思いますね。

　Q：アテネ五輪では、金メダル2個だったのですが、北京五輪の目標は1個？それとも2個？

　A：私の力をそんなに信じてくださっているんですね(笑)。金メダル1個取るだけでも、一杯の努力が必要ですよ。そんなに簡単に手に入るわけではありません（笑）。

　Q：北京五輪は、郭晶晶さんにとって4回目の五輪出場となりますが、ここまで頑張ってこれた原動力といえば？

　A：私は、飛び込みを楽しんでいるんです。単に金メダルのためなら、ここまでやってこなかったと思います。飛び込みでは、国内はもちろん、国際大会でも、取れるタイトルは全て持っていますから、優勝そのものにはそれほど魅力を感じなくなりました。では、なぜ4度目、オリンピックにチャレンジするかといいますと、やはり、飛び込みが好きだからです。あと、自国で開かれるオリンピックで現役を終りたいということもありますけど。

　Q：引退後の生活については？

　A：まだ詳しく考えていませんが、とにかく静かな生活をしたい。気軽に街に出かけて買い物をする、そんな生活がほしいです。引退しても、完全に飛び込みから離れたくないんです。できれば、飛び込みと関係のある仕事をしたいと思います。