シャープ株式会社取締役、夏普商貿(中国)有限公司菅野信行董事長に聞く
国慶節の大型連休がまもなくやってきます。国慶節商戦に向けて、さっそく各企業が動き出しています。8月末、液晶テレビ大手のシャープが上海で新製品AQUOSGXシリーズの発表会を行ないました。今回の新製品発表会で、シャープは初めて中国市場向けのイメージキャラクターを起用し、中国市場にかける期待の大きさを見せています。
中国の液晶テレビは去年の販売実績は約360万台、今年は去年の2.4倍の870万台に拡大すると予測され、世界の中でも最も潜在力の大きい市場だと見込まれています。各社とも、まさに今、しのぎを削っている最中の中国市場で、シャープはどのように企業活動をし、今後に向けて、どのような意気込みをかけているのでしょうか。シャープ株式会社取締役、夏普商貿(中国)有限公司菅野信行董事長に取材しました。
Qシャープにとっての中国市場の位置づけは?
A従来、中国は世界の工場、つまり、生産基地と捉えられていましたが、最近は沿岸部を中心に、東北部などでも富裕層が増えていて、活発な消費を行っています。中国は今、世界でも注目される目覚しい市場になっています。シャープとしても、従来はアメリカ、ヨーロッパの市場を中心に伸ばしてきましたが、これからはやはり中国だと思っています。そのため、シャープは中国市場をターゲットにして販売を伸ばしていくことに力を入れており、今後も進めていきたいと思っています。とりわけ、中国政府は、北京五輪に向けてデジタル放送の普及に乗り出していますので、これは我々にとって大きなチャンスだと思います。
Q今回発売の新商品の特徴は?
A今回の商品は従来と同等の機能を持ちながら、より薄く、より軽く、体積を小さくし、壁掛けにより適したモデルとなっているのが特徴です。
Q今回の新製品は日本ではいつ頃発売されたものですか。
A日本では7月2日発表です。昔は日本でリリースしたものは半年、或いは一年かけて、やっと中国で発売するケースもあったのですが、これからは日本で発売したものは一、二ヶ月のうちにこちらに持ってくるという方針でやっているので、そんなに時間の差はないです。
やはり、中国の消費者は日本のデザインを好まれるし、インターネットによって日本で発売した商品がすぐにこちらにも伝わりますから、それをできるだけ早くこちらの販売をお届けできるようにしたいため、設計から始まって、生産のスケジュール管理まで、時間を短縮して、少しでも早くお届けできるようにしたい。日本でリリースしたものが半年や一年もかけてやっと中国に来るという、もうそういう時代ではないです。これは、ここ一年半ほど前から起きた変化ですね。
Q他のところと比べて、中国の消費者のニーズには何か特徴的なものはありますか。
A基本的には、デザイン的に、中国の方も先進的なものを求めているケースが多いので、日本のデザインそのものが非常に受けいれられています。我々としては、日本で発売したものと同じデザインを出しています。これはアメリカやヨーロッパとは違うところです。
Qところで、シャープの中国での事業展開の現況は?
Aシャープは、1992年に中国に進出しました。今、江蘇省と上海に集中して、中国で6つの工場を構えています。上海には2つ、その他はすべて江蘇省、長江沿いにあります。合計して、約2万5千人の従業員がいます。南京には液晶テレビ、常熟にはコピー機、無錫には液晶パネルの工場があります。現在、6つの工場はいずれも利益が上がっています。
Q何故長江デルタ地域に集中しているのですか?
A一番大きいのは、上海と江蘇省には元々インフラが良く整っている上、優秀な人材を得やすいこと。また、地元政府も熱心ですので、様々なサポートが期待できると考えました。さらに、ここは中国で一番富裕層の多い地域ですので、商品の消費地に近いことも魅力を感じました。
Q今後に向けての中国事業の予定は?
A先ずは、シャープにとって一番重要な液晶テレビ事業を一番に進めたいと考えています。それから、シャープとして、国内ではNO1.のシェアの携帯電話の進出ができないかと思っています。
Q駐在員としての感想を一言お願いいたします。
A上海に来たのは、1年10ヶ月前のことですが、海外生活が長くて、今年は25年目に入りました。中国は、7番目の海外勤務地です。世界でも、一番ダイナミックに動くところで働けて嬉しいです。ここは中国全体の情報発信基地で、ここにいれば、情報が得やすいし、メリットが多いです。また、この周辺は富裕層が多いので、高付加価値商品を出す上で、消費者がすぐ目の前にいるというところにも大きな魅力を感じています。
メーデーなどの大型連休の時、中国人旅行者と共に、各地を旅行することが楽しみです。中国には、世界に誇れる5000年の歴史と名所旧跡がたくさんあるので、非常に嬉しいです。(取材・文:王小燕)
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