
アジア・ロジスティクス研究所白土茂雄代表
物流業は最近、中国で急速な成長を見せています。物流は英語ではlogisticと言い、元々軍事用語で、後方支援という意味ですが、後に生産活動における「物的流通」という意味として使われるようになりました。
そもそも「物流」という言葉は、中国には1980年代、日本から伝わってきた新しい言葉です。1980年代、「物流」は日本に留学して帰国した学者により中国に持ち込まれ、とりわけ、ここ十年、中国で著しい発展を見せました。中国国際貨物運輸代理協会によりますと、中国の物流の市場規模は2001年から2005年までの5年間に、それ以前の5年間に比べて、1.4倍増え、年間の伸び率は23%となりました。
さて、中国がWTOに加盟した際の約束事項の一つとして、中国の物流業は2005年末に全面的な対外開放を実現し、2006年は、外資の物流企業が中国に大々的に乗り出した年となりました。2006年、中国の社会物流総額は一昨年と比べて17%増え、59兆元に達したという統計が今年の年頭に発表され、さらに、2010年までに、中国は日本と肩を並べるほどの世界第二の物流市場に成長すると見込まれています。
では、WTOと市場開放は、中国の物流業と外国の物流業にどのような協力のチャンスをもたらしたのか、とりわけ、日中の物流業の協力の可能性はどのようなものなのか、先日、北京出張中の日中の専門家にお話を伺いました。

上海同済大学副総長でもある楊東援教授
上海同済大学副総長でもある楊東援教授は、「今の中国には、多国籍企業や海外のメーカーが数多く進出しているため、物流業の市場開放がたいへん重要な問題として注目されている。中国は管理システムや法体制、政策の整備に力を入れている。市場開放は内外企業の協力と提携に多くのチャンスを提供した。外国の物流企業は管理と技術に長けているのに対して、中国企業は中国市場のことを良く知っている。もし、双方がお互いに利点を結び付けることができれば、相互が利益になると思う。」
中国の企業が海外企業を見習う必要があることについて、楊教授は、「中国は日本を始め、海外から様々なやり方を導入しているが、運用面ではまだまだ問題点が多く残されている。とりわけ、管理方法について、まだしっかりできていないことが多いため、サービスレベルの向上が今後の課題だ。中でも、会社の管理や従業員教育の面で参考になることが多い」と指摘しました。
一方、アジア・ロジスティクス研究所白土茂雄代表は、「最大の問題は従業員の教育だ。いかにして、農村出身の人たちの作業の質を向上するか。これは、彼らが悪いのではなく、関連の教育システムが整っておらず、従業員教育の意識がまだ高くないことにある。これには中国企業の自己努力と自己改善が求められ、世界的な物流企業の進出を恐れずに、大胆に立ち向かってチャレンジしていくことが求められる」と指摘しました。
2008年の北京オリンピックと2010年の上海万博は、物流業の視点から見れば、いずれも良い発展のチャンスがもたらされると注目されています。楊教授は、「多国籍企業が国を跨いで、クライアントに対し同等のサービスを提供していくには、中国企業との提携が必要だ。また、中国企業も中国大陸に限らず、海外企業との提携により、グローバル展開をする時代がやってくる」と述べ、また、「中国と日本は競争だけなら、お互いにとって損になるので、タイアップして協力しあえば共通の利益が生まれる。さらに、中国は持続可能な発展をしていく上にも、海外から環境配慮型のグリーン物流などの進んだ理念を学ぶ必要があり、海外の物流企業との提携に大きな可能性がある」と今後の将来性を楽観視しています。(王 小燕取材・文)
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