2006年、中国では、およそ400万人の大学生が卒業しましたが、厳しい就職状況に直面しています。大学生、企業、社会、政府はどんな取り組みをしたのか、スポットライト、今週と再来週の二回に分けて、2006年、中国大学生の就職状況についてご紹介します。
今年の北京は台風の影響で、例年より蒸し暑い日々が続きました。8月の下旬、夏休みがまだ終わっていないのに、一部の大学三年生は早めに学校へ戻り、1年後の卒業に向けて就職活動を始めました。また、今年卒業したばかりの多くの大学生は仕事が見つからず、厳しい残暑の中、各種の求人面接会を走り回っています。8月20日、500社ほどの企業が参加した北京のある求人面接会には、全国各地から数万人の大学卒業生が殺到しました。
国家発展改革委員会が発表した「2006年大学卒業生の就職指導書」によりますと、2001年から2005年まで、中国の大学卒業生の平均就職率は70%にしか達していませんでした。大学卒業生の数が年々増えるとともに、大学卒業生の失業率も年々高くなっています。高学歴を持ちながら失業している人が増えているのです。
そして今年、2006年ですが、中国の大学卒業生はおよそ413万人で、去年より75万人も増えました。大学卒業生数は2001年の4倍となりました。こうした厳しい状況の中、企業の中には大学卒業生に対して、1000元以下、つまり日本円にして1万5千円以下という低い月給を提示した所が出てきました。大学卒業生の低賃金時代がやって来たのではないかと人々は嘆いています。
まずは大学をすでに卒業したが、まだ仕事が見つかっていない人に聞きました。
「多くの会社から卒業したばかりの学生なんか要らないと言われました」
「がっかりしました、今日、履歴書をひとつも提出することができませんでした」
一方企業側の担当者は、次のように話しています。
「大学生が職場を選ぶ条件を出す必要なんかありませんよ。まずは職を見つけることに専念すべきです」
「わが社は職員を選ぶとき、仕事の経験がどれだけあるかを重視しています」
国家発展改革委員会の報告書によりますと、2006年、400万人の大学生の他にも、就職活動に取り組んでいる人は多勢います。大量の中等技術学校の卒業生、中学校や高校卒業生、農村の余剰労働力、国有企業の一時帰休者、そして社会保障機構に登録された800万人の失業者です。
こうした厳しい就職戦線でのプレッシャーや不安感は、大学卒業生とその家族だけでなく、来年卒業する予定の大学三年生にまで及んでいます。
「夏休みの間に色々考えて、心構えをしました。元気を出して、新しい挑戦に向かうより仕方がないと思います」
「4年間の大学生活には、お金が沢山かかります。親に学費を返すためにも、出来るだけ給料のいい仕事を探したいんですが」
この所厳しくなっている就職のプレッシャーによって、大学最後の一年間は、勉学の総仕上げという本来の意義を失いつつあるようです。多くの学生にとって、いい仕事を探すことがこの一年間で最も大切なことになりました。学生たちにとっていい仕事とは、賃金の良いことが、一つの重要な要素です。給料は社会的な価値の表れというだけではなく、自分のプライドにも関わっていると多くの学生が思っています。
「今の消費レベルや周りの先輩や同級生たちの実例から見れば、私にとって月給は2000元あれば十分です」
月給2000元、これは最近の多くの大学卒業生が望む賃金レベルです。しかし、北京大学のある研究グループの調査によりますと、去年就職した大学卒業生のうち、月給が2000元を超えたのは僅か15%しかありませんでした。平均月給は1588元で、日本円にして2万円ちょっとでした。
同じ北京大学の調査によりますと、今、中国では、一人の大学生を養成するには、15万元もの費用がかかります。大学教育の現状に対して疑問の声が上がり始めています。北京大学の楊教授は次のように述べました。
「教育の産業化によって、学費が年々高くなっています。大学生を養成するには、親もたくさんの費用がかかるし、国も資金をたくさん投入しました。しかし、せっかく育成した大学生が結局仕事を見つけられないのでは、学生育成のためのコストが高くつき、効率が低いことを意味することになるでしょう。今まで育成した多くの学生は、ほとんどが公務員や国家機関向きの職員で、創業型、技能型の学生が少ないのが現状です。これは昔の教育構造がそのまま残っているためだと思います」
就職市場に直面して学生たちは就職難を訴え、一方企業側は人材難に不満を持っています。世界的に有名な調査会社マッキンゼーが去年末に発表した「中国の人材に関する報告書」によりますと、世界の多国籍企業が必要とするニーズに応えることができる人材は、中国では僅か10%にしか過ぎないことを明らかにしました。この報告書の内容が全て正しいかどうかは別として、多くの大学卒業生が企業側の要求を満たしていない事には注目をすべきです。
では、就職のプレッシャーに直面し、就職市場ではどんな現象が現れたのか、大学生、社会、企業、政府はそれぞれどんな対応措置を取っているのか、再来週のスポットライトは引き続きこの話題についてご紹介します。ぜひお楽しみください。(取材・担当:劉叡琳)
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