中国で旧型の「夏利(シャレード)」タクシーを全て引退させることが決まりました。これよりさき1999年に全車引退した「ハイゼット」タクシーと同じく、耐用年数が過ぎたというのが理由の一つです。オリンピックに向けて、ワンランク上の車種に交換されることとなります。
10年ほど前、かつて中国でタクシーと言えば、首都の北京でも「シャレード」か「ハイゼット」でした。中国名でシャレードは「夏利(シャーリー)」、ハイゼットは「面的(ミエンディ)」と呼ばれていました。「シャーリー」は音読みを中国語にあてたもので、「ミエンディ」はパンを意味する「面包(ミエンパオ)」から名付けられたものです。しかもシャーリーの車体は必ず赤色で、ミエンディは黄色。赤と黄色のタクシーが街中を走る風景は、一昔前の中国の風物詩とも言えるでしょう。

シャーリーはハッチバックタイプで、ミエンディはなんとワンボックスの軽商用ワゴンです。後部の荷室に折りたたみ式のイスを二列配置していました。セダンタイプが常識の外国人にとっては、空港でハッチバックのタクシーが来てもかなり違和感があるのに、ミエンディが来たらぶったまげてしまう。それが理由ではないだろうが、実際、ミエンディは、その当時でも空港への乗り入れは禁止されていました。もちろん、料金はシャーリーよりもミエンディの方が安かったし、荷物も人もたくさん積めるので、庶民が好んで乗るのはミエンディでした。料金は北京で初乗り10元程度(当時のレートで160ー300円)でした。

ミエンディというかハイゼットはもちろん一般にも販売されており、十年ほど前には新古車価格が日本円で100万円以上もしました。当時は地方都市はまだのんびりしていて、庶民はタクシーに1人で乗るときは助手席に座りがちで、一応、前席と後席の間には鉄格子があって、ドライバーも安心なはずなのです。助手席に座ってドライバーと四方山話をするのが庶民の乗り方だった。ミエンディとシャレードが"ちゃんとした"セダンに取ってかわられて姿を消していくのと同じように、今ではそのような客とドライバーがふれあうタクシーの乗り方も少なくなってきているようです。
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