お酒を造る時に欠かせないものの一つに、麹があります。
お酒を作る麹(こうじ)、発酵剤である微生物を人類の生活に応用した歴史を辿ってみよう。
今から六七千年前に、中国人の祖先が最初に発明した人工の『酒麹(さけこうじ)』は後に、それも数千年後に工業用アルコールの発明に直接つながるものとして、一部の外国の学者はこれを羅針盤、火薬、製紙、印刷技術の四大発明と並ぶ、人類の進歩に貢献した五大発明とすべきと主張しています。
承知のように、澱粉を含んだ穀物で酒を作るには二つの段階が必要です。まず澱粉を加水分解してブドウ糖などを生成する酵母菌を使って発酵させてアルコールを含む酒ができるわけですが、家庭で甘酒などを作る時にはマーケットで酒麹を買ってきて、炊いたもち米に混ぜ、一定の期間置いておけば甘酒ができる、この二つの段階がどう見ても一段階にしか見えません。その神秘が実は酒麹にあるのです。
酒麹は穀物から作られる発酵剤、糖化剤で、これには大量の微生物が含まれています。その中には糖化作用の働きをする黄麹、黒麹などのほか、糖化とアルコール化作用の働きを同時にする赤麹などが含まれ、一般的に言って、アルコール化を促す酵母菌が含まれています。酒麹を使えば、糖化とアルコール化という二つの段階が一つに結ばれ、澱粉が糖化しながらアルコール化作用が進められ、両者が連続して交差して進められます。これを複発酵法と呼び、これは中国人祖先が造酒過程の中での偉大な発明で、後世の酒類、アルコール、発酵食品及び医薬品などの面での生産に極めて大きな影響を及ぼしました。
ところで、酒麹の誕生は、穀物醸造酒と同時に誕生したものであることは疑いありません。
始めの頃はおそらく保存の過程で、カビが生えたり、芽が出た穀物が出来、これが天然の酒麹です。これが水に浸かり、発酵して酒となります。こうした過程を何度も体験する中で、細かに観察し、酒麹の生れる多方面の条件をまとめ、何度も実験を重ね、ついに人工の酒麹を作り、これが古書に記るされている『麹蘖(きくげつ)』、つまり穀芽、穀物の芽という意味の麹蘖と呼ばれるものです。
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