今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間はむかしの「子不語」という本から「伊五」、それに「狩人の人助け」というお話をご紹介いたしましょう。
では「伊五」から。
「伊五」
むかしむかし、軍隊に伊五をいう若い兵士がいて、背が低い上に男前とは程遠い面をもち、それに上司におべっかを使うということを知らない。もちろん伊五はかなり嫌われ、上司からいつも邪魔者にされていた。それに伊五は貧しい家に生まれ、小さいころに両親が亡くなり、一人ぼっちだったことから、意地悪な奴どもにも馬鹿にされ、毎日が苦しく思え、終いには生きているのがつまらなくなった。そこで縄を手に郊外にある林にやってきて大きな木を見つけて縄を枝に縛り、首を吊ってこの世を去ろうとした。すると、どこからか一人の白いひげを生やしたじいさんが来ていう。
「あいや!お前はまだ若いくせに何を考えとるんだ!?」
これに驚いた伊五は、急に正直になり、どうして死のうとしたという理由を話した。
「なんじゃい!?お前はみどことがあるぞ?死ぬなんて馬鹿なことを考えず、わしについて術を学べば、困って暮らしていくことはなくなる。どうじゃ?」
「ほ、ほんとうですか?」
「ああ。わしはうそはつかん。」
「では、弟子にしてください。お願いします」
ということになり、伊五は死ぬことをすっかり忘れてこのじいさんについていった。
こうして、じいさんは伊五の右手をつかんで歩き出し、小さな川の辺をたどり、やがて葦が茂っているところに来ると、急に中に入り、右左回って、なんと小さな空き地に建ったわらぶき屋根の小屋に入った。
その日から、伊五はこのじいさんと暮らし、半年が過ぎたが、ある日、じいさんはもういいだろうと言い出し、急に小屋と共に姿を消してしまった。
伊五はそこを離れたがもう軍隊には帰らず、生まれ故郷に戻った。久しぶりに帰ってきた伊五の様子がかなり違うのを見て幼馴染たちは首をかしげたが、伊五はそのときから懐に金があるようで、いつも飯屋で腹ごしらえしていた。
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