北京の東北部に位置する「大山子芸術区」。この「大きいに山の子」と書く芸術エリアは、別称「798工場」です。大山子にはもともと国営の798番工場があり、1950年代、旧ソ連、東ドイツが設計、建設した当時の重点工業プロジェクトでした。工場は典型的なバウハウス風の建物で、アジアでも稀なものです。
都市の近代化が進む中で、ラジオなどを生産した工場は衰退してしまい、巨大な建物は使われなくなりました。そして、2002年から、大勢のアーティストがここに進出し始めました。大きな作業場はギャラリー、芸術家のアトリエ、本屋、服屋、カフェなどに変身し、この古い工場は僅か二三年間で注目度の高い現代アートの発信地となりました。
京劇と現代音楽の共演という注目されるものもあり、京劇を演じたのは中国京劇院の名優ーー江其虎さんです。江さんは30年を超えるキャリアを持って、中国の京劇界で影響力のある俳優さんです。伴奏しているのは北京新楽団のみなさんです。共演を聞いて、なんとなく奇妙な感じがしました。伴奏の音楽は京劇の元のメロディーをアレンジして現代楽器で演奏するものではなく、全く京劇と関係のない音楽に聞こえています。でも、妙に合っている感じです。
開幕式にはまだ色々面白いパフォーマンスがあったそうですが、あちこち回りたかったので、心残りながら、次のスポットに向いました。
「ご主人さま、お帰りなさいませ!」ーー日本の方なら、おなじみな呼び声かもしれません。日本で流行っているメードカフェーですが、なぜ中国の芸術区にやってきたのでしょうか。しかも、純粋な日本語で?ーー実はこちらは日本の有名なギャラリー、東京画廊と大山子芸術区の先駆者、黄鋭さんが共に設けたアートスペース「北京東京芸術工程」です。ちなみに「798工場」でアートスペースをオープンしたのは東京画廊が初めてです。今回は日本の漫画に因んだ展示にあわせて、一日限りのメードカフェーを設けたのです。
それ以外に、まだまだいっぱい面白い見所がありました。例えば、撮影ブログの展覧が、結構注目を集めていました。ブログというのは最近人々に馴染まれてきたことですが、撮影ブログはさすがにぴんと来ないですね。普通のブログは日記的なウェブサイトと定義されていますが、撮影ブログというのは、日記じゃなくて、日常生活を記録する写真を載せるウェブサイトといえば、なんとなくお分かりになるでしょう。
今回の撮影ブログ展覧会のメイン作者は温凌さん、中央美術学院出身、専攻が西洋画です。たまたま、ニューヨークのカメラマンのブログを見て、普通の外国人の生活様式に新鮮さを覚えたそうです。普通の中国人の日常生活を撮ってネットに載せれば、外国人も簡単に中国の実体を見ることができるんじゃないかと思って、撮影ブログを始めたわけだそうです。
「798工場」に興味のある方なら、今度北京に来られた時、ぜひ寄ってください。
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