ここ数年、中華料理はもちろん、名監督・張芸謀、陳凱歌の作品を代表とする中国の映画も、世界で有名になりつつありますが、ただ、中国の音楽だけが物足りないように感じられます。
というのは、ピアノの演奏や、ポップスの創作とかは、いくら上達できたとしても、あくまでも外来のものです。中国は、京劇、昆曲、黄梅戯など、自らを代表する音楽がいっぱいあるのです。そんな数多くの選択肢に、「鼓曲」があります。
鼓曲は、鼓書とも言って、京韵大鼓、西河大鼓、梅花大鼓、京東大鼓、琴書、快板などの総称です。太鼓、板(リズムを取る拍子木)、三味線などの伴奏に合わせて、歌いながら物語を演じる語り物で、中国では100年以上の歴史をもつ伝統演芸です。内容は、歴史や伝説、庶民の暮らしなどを描いたものが多くあります。
鼓曲は1920年代、中国の北方地区、特に北京、天津、河北省あたりでは、いまのポップスのように流行っていました。公演があれば、劇場はいつも満員でした。しかし、20世紀の後半から、人材の不足などで、ずっと低迷状態が続いており、改革開放してから、外来文化の衝撃を受け、鼓曲がさらに沈んでしまいました。
こうした状況の中で、鼓曲の創作や公演に取り組む北京曲芸団は、漫才や鼓曲など伝統演芸を振興するという政府の方針に合わせ、鼓曲の低迷状態を打開しようと、今年6月から、学校や農村で公演をやってみました。そうしたら、意外に評判がよく、公演の注文が次々と寄せられました。曲芸団の団長によりますと、例年の6月と7月は、まったく注文がない時期ですが、今年6月に始まってから、すでに公演は100回近くになりました。また、訪れた観客は、年配の人だけではなく、若い人が半分を占めていたそうです。
いま、北京での鼓曲公演は主に、前門大柵欄の広徳楼で、毎週日曜日の午後2時にやっています。鼓曲が、復活して光り続けていくものか、それともポップスみたいに一瞬で終わるものか、一緒に見ていきましょう。
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