中国では今、"原始生態型(中国語名:原生態)の芸術"の保護が叫ばれています。これは、まったく手が加えられず、古来のまま伝えられた歌や踊りなどの芸術を指します。
最近では、広西桂林の山水を背景に地元の歌や踊りを披露する「印象・劉三姐」、雲南の歌舞「雲南映象」などが上演され、いずれも大好評でした。そんな中で、今年10月、上海では、この「原始生態型」芸術の大作がありました。チベット族の大型歌舞劇「蔵謎(チベットの謎)」です。
ストーリーはこのようなものです。あるチベット族のおばあさんが、ふるさとの四川省九寨溝からチベットのラサへ礼拝に行きます。その途中、裸麦の刈り取りをする農民たち、ヤクを放牧する少年、衣装祭りで美を競い合う少女たち、それにラサのポダラ宮の掃除・改造作業に参加する男女たちと出会います。歌舞劇「蔵謎」は、そのおばあさんが途中で見たこと、聞いたことによってストーリーが展開されます。
出演者は、1人を除いて全部チベット族で、しかも半数以上が農牧民です。しかし、彼らのパフォーマンスはプロの歌手やダンサーにも負けないものでした。伝統楽器・六弦琴の演奏、長袖舞、衣装祭り…日常の農作業やお祭りのときに、披露される歌や踊りを2時間にわたって、舞台の上であるがままに演じていました。観客も、まるでチベット高原にいるかのような気分で、公演を楽しみました。
六弦琴の演奏では、男性の出演者30人が手・口・足の動きをそろえ、琴を弾きながら歌い、踊ります。六弦琴を頭の後ろに持って、肩で担いで弾いたり、みんな横一列になって、隣の人の六弦琴のさおを持ってその琴の弦を押さえながら、自分の琴の弦を弾いたりするという、"高度な"技を見せてくれました。琴の音、かけ声、それにブーツが床をたたく音が一緒になって、迫力、という言葉では表現できないほどの"生活に対する熱烈な愛"を感じました。
「蔵謎」は、上海公演の前に、武漢・長沙・杭州・南京・蘇州などの都市を回りましたが、いずれも観客動員率90%以上に達したということです。11月中旬には北京で上演され、今後は、海外に行く予定となっています。総監督の楊麗萍氏は、今回の作品への思いをこう語っています。
「チベットの踊りは心の踊りだと思います。チベット族は、このような踊りや歌によって、生活や自然に対する思いを表しています。この思いを、作品を通じてチベット以外の人々に分かってもらいたいと思います」
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