紹興酒にはこんないわれがあるそうです。
中国には、興に乗じて来ると言う成語がありますが、これは興味深いと思ったときに来るということらしいですね。この成語は「晋書・王徽之伝」から来たものです。ここに出てくるの酒とは紹興酒のことです。
時は東晋時代。書道家王羲之の三男王徽之は、若いときから尊大で、人から束縛されるのを好まず、豪放であったという。もとは朝廷で役についておったが、役職をしっかり果たさず、常に遊びに出かけた。
のちに官職をやめ、山陰、つまり今の紹興に隠居し、毎日、山や川に遊び、地元の酒を食らっては詩歌をつくり、自由自在に暮らしておった。
と、ある年の冬、なんと珍しく雪が降り積もり、雪がやんだ夜に月が昇り、その光が雪に映えてあたりは銀の世界となった。
王徽之は、窓をあけ、この素晴らしい雪景色を目にしたので、窓際に机を置き、家の者に酒と肴を持ってこさせ、一人で雪見酒を始めた。そのうちに嬉しくなり、外の景色を眺めては、酒を口に運んで詩を詠み、そのうちに踊りたいような気分となったワイ。と、彼は「この場で琴の音を耳にすればどんなにいいことか」と思い、琴を弾き絵もかける友である戴逵が頭に浮かんだ。
「そうじゃ!奴に会いに行こう」と、これを聴いて驚く下男を供にし、夜だというのに船を出させ、遠くに住む戴逵の家へ向かった。途中、月の光が川面に映り、それが波に揺られてきらきらまばゆいほどに目に入り、また両岸の真っ白な景色も王徽之を夢中にさせた。
「これ、もっと早く船を進ませろ!」と王徽之はこの月夜の雪景色を友の戴逵と一緒に楽しみたいばかりに、下男に早く船を漕がせた。
そしてやっとのことで戴逵の住むところについたが、王徽之が不意に言い出した。
「もいよいわ!戻るぞ!」
これには下男が驚き、「旦那さま!やっとのことで戴逵さまのところについたのでござりますよ。それをどうして」
これに王徽之は答えた。「わしは興に乗じて来たまでのこと。いまは興はなくなった。つまり、酒が冷めたのじゃ!もう戴逵にあう必要はない。帰るぞ!」とね。
へへ!酔いがさめちゃったんですよ!そりゃつまらんでしょうな。はいおしまい!
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