「さあ、さあ!賭けた、賭けた!儲けようと思っている人は是非賭けてください。儲かるよ!一文がすぐに十文に。十文がすぐに百文に変わるよ。さあ、賭けた、賭けた」
この呼び声を聞いた男は、自分も一儲けして多くのものを買い、妻を喜ばせようと思ってそこに行き、よせばいいのに持っている銭全部を賭けてしまい、いっぺんにすっからかんになってしまったのだ。これを悲しんだ男はこれじゃ妻と生まれたばかりの子供に合わす顔がないと、いっそのこと鳥居に頭をぶつけて死のうと思ったという。
これを聞いた張さんは気の毒に思い、これからものを買わなければならないことをも忘れ、懐からお金を取り出し、周りで見物している人々に向かって叫んだ。
「みなの衆!この人は一時の迷いから銭を持っていかれたんだ。家には子供を生んだばかりの妻が米のおかゆを食べるのを待っているんだ。私にはこの百三十七文しかないが、みなの衆!どうかこの男を助けてやってくれ。いくらでもいいから出し合って、この男と家族が生きていけるようにしようじゃないか!」
この張さんの呼びかけに周りの人は応えた、こうしてみんなはそれぞれ四十文、三十文をと出し合ってなんと五百文が集まり、張さんはそれを全部男に渡したので、男は涙を流してみんなにお辞儀しその場を離れて行った。
さて、こちら張さんはこれでほっとしたが、急にこれからまだ買い物があることを思い出した。が、懐は空っぽ。
「あれまあ、これはいかん、大変なことになった。どうしよう。うちの母ちゃんと息子のものも買ってないし・・・、それに明日から紅焼肉麺(hong shao rou mian)はどうするんだ?こまったなあ・・」
張さん、困り果てて呆然となったが、金がないのでは仕方がない。こうして張さんは、これまで買ったものを天秤棒で担ぎ、妻に叱られる覚悟をしてとぼとぼと帰途に着いた。
さて、張さんは家についてから、妻が口をあける前にありのままを話した。
これを聞いた妻は怒るどころかいい事をしたと夫を慰めたものの、明日からどうしようと困りだし、寝ている息子の顔を見ながら夫婦二人はため息をついた。
こうして夫婦はその夜はなかなか眠れなかったが、夜明け近くになって妻が急に起き出し、手をたたいて言う。
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