「おまえさん、いいことに気がついたよ。」
「え?なんだい、なんだい?何に気がついたんだい?」
「あのさ、もう天気も暑くなったことだし、お客さんは脂っこいものはあまり食べなくなったでしょう?」
「そういえばそうだな」
「だからさ。うちでは醤油が切れているんだから、豚の骨を煮た汁で薄い塩味のおつゆ作ってさ、それに茹でた麺を入れ、その上に煮た豚肉の薄切り、ねぎと生姜のみじん切りを載せてお客さんに出せば、かなりあっさりしてるから喜ばれるかもよ?」
「そうだな、それも少し冷やして出せば、この暑い時に売れるかもしればないな」
「そうしましょう、そうしましょう」
ということになり、夫婦は早速起きだして、仕事を始めた。
そして昼前に、店の前に「白湯麺を始めました」という看板を出した。これを見た道行く人々、なんだなんだ?白湯麺だとと面白がり、早速店に入ってこの「白湯麺」を注文した。
「うん?この麺もうまいし、おつゆは軽く塩味がしてさっぱりしてるぞ!この暑いときにはもってこいだ」
「おう、おかみさん、これはうまいね。もういっぱいくれよ」
ということになり、このことが広がり、店は大いに繁盛。しばらくしてこの「白湯麺」はうまい麺だとして知れわたったので、多くの店では厨房人を来させてこの麺を食べさせ、挙句はこっそりと作り方を盗み学んだ。こうして「白湯麺」は夏の蘇州の食べ物となったわい。
え?張さん夫婦?人が自分の麺の作り方を盗み学んだことには気にもとめず、この店はその後も繁盛し、夫婦は幸せに暮らし、一人息子も親の仕事をついで一生懸命働き、その後はいい嫁さんもらって子供をもうけ、張さん家族は幸せに暮らしたという。いいですな。
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