お茶は中国の国民的な飲み物で、昔から伝えられた格言にも、暮らしを立てるに必要な七つのものは、「薪、米、油、塩、醤油、酢、茶」と記され、中国人にとってなくてはならない生活用品の一つとなっています。
それゆえ、中国人の生活習慣、さらには、中国文化を理解するには、まず、中国茶を飲むことから始まるべき、と言った方が無難でしょうか。
メーデーのゴールデンウイークには、北京の八大処公園が、中国のお茶に触れる機会を与えてくれました。そこで、「雲南省思茅市プーアール茶文化週間」というイベントが行われました。
プーアール茶の故郷は、中国雲南省のシーサンパンナ(西双版納)と思茅地域です。この思茅というところには、「普耳(『シ』に『耳』、日本にない漢字なので、『耳』で代用)」という県があり、その周りで採れたお茶が一旦、普耳県に集められ、加工された後、また全国各地で販売されます。その地名を取って、「普耳茶(プーアール茶)」と名付けられたのです。
雲南省あたりの中国の南西部が産地の中心地だったので、最初は、雲南、広東あたりの南方で好んで飲まれていたのですが、プーアール茶の独特の香りが評判を呼び、今や全国各地、さらには、韓国、日本、東南アジア一帯まで広まりました。
そして、最近は、愛好者がぐんと増えて、とくに女性の間では、ちょっとしたプーアール茶ブームになっています。
それを受け、お茶に関する文化祭を2002年から、年に一回行ってきた北京八大処公園は、今年のテーマを「プーアール茶」と決め、プーアール茶の歴史、特徴、飲み方などを観光客に紹介し、中国伝統のお茶を楽しんでもらおうと、「プーアール茶文化週間」イベントを催しました。
このプーアール茶文化週間は、プーアール茶の歴史などを分かりやすく紹介するため、専門家による講座、民間の「お茶収集家」によるお茶の飲み比べなど、さまざまなイベントが企画されました。
お茶の葉を蒸したものが生茶、生茶を発酵させたものが熟茶と呼ばれます。プーアール茶文化週間で、講演を行ったお茶の専門家・黄桂枢さんは、プーアール茶の熟茶の由来を教えてくれました。
「昔の交通機関は馬しかなかったですね。プーアル茶の新茶の葉を馬に乗せて、北京の皇帝にさしあげようとすると、最低でも半年はかかったわけです。出発の時、生だったものが、輸送中に、様々な地域の気候の中を通過して、いつのまにか自然発酵してしまったのです。だから、北京についたときには、熟茶になっていたというわけです。茶葉の色も黄色からコーヒー色になり、飲んでみると、生茶よりもっと香りがいいじゃないですか…。そこで、この熟茶も楽しむようになったわけです。プーアル茶の熟茶は、そんな偶然から生まれたんですよ。」
プーアール茶文化週間で、このような講座やイベントが数多く行われ、それを通して、観光客は、お茶、特にプーアール茶に関する知識をゼロから身につけることができました。
しかし、主催者は、このイベントを単なるお茶の紹介にとどまらず、むしろ、長い歴史を持つ中国文化を伝えることに重点を置いていました。
「2008年の北京オリンピックは、『人文のオリンピック』がテーマの一つです。その『人文』に、『中国の文化』が含まれているんです。だから、このプーアル茶文化週間を開いて、全国各地、さらには、世界各国の人々に、中国文化を紹介する…これは北京オリンピックの成功にも貢献することになるわけです。」(八大処公園宣伝部主任・範エンリ)
「ゴールデンウィークのような長い休みや祝日に、公園に来るのは、子供連れの家族が多いですね。このようなイベントをやると、大人だけではなく、子供たちに中国の伝統あるお茶を紹介することができます。子供のころから、中国伝統の飲み物であるお茶を飲んで、そこから、中国文化を理解してもらえば、と思います。」(中国国際茶文化研究会研究員・黄桂枢)
健康にもよいし、中国の伝統ある文化の表れでもあるお茶・プーアール茶、ぜひ飲んでみてください!
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