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文化の金メダル 
   2008-09-10 11:53:43    cri

文化の金メダル 

ーー北京五輪開会式に招かれてーー

「鳥の巣」で高まる興奮

 私たちは夫婦で、世界中が注目した北京五輪開会式に中国・国務院新聞弁公室の蔡名照副主任に招かれて、6ー11日に北京に滞在しました。

 わくわくして、北京空港に到着し、さわやかに大きく変貌(へんぼう)した北京空港の雰囲気に息をのんだ。予測したイメージと違って、清潔で活き活きとしている。その時、北京オリンピック開会式の演出のすごさを予感した。

 古い友人たちに出迎えられ、ホテルに到着。7日には、中国の歴史で重要な変革時には「天安門楼上(ろうじょう)」が主役であったという故事にならい、厳しい警備の天安門楼上に上り、天安門広場を見渡しながら感慨にふけった。

 異形の国家体育館、通称「鳥の巣」で「2008年8月8日午後8時」、開会式が挙行された。9万人の観客をのみ込んでいる「鳥の巣」だが、私たちはスムーズに会場に入れて観覧席についた。会場中心の正面貴賓席の真向かいの席。前から2列目で、前列は世界の報道機関のカメラマンが陣取っていた。

 会場が薄暗くなり、興奮が高まってくる。世界80カ国の元首たちも着席された。私たち夫婦は、「どうしてここに居られるの」と、自問自答した。摩訶(まか)不思議な気分であった。

華麗な演出 心から敬意

 グラウンドには、音もなく、スピーディーに2008人が入場し、古代の大きな太鼓を置き、静かに準備が完了する。花火が高く舞い、興奮の渦に包まれる。60秒前が表示され、10秒前からはカウントダウンが始まった。

 2008個の大太鼓のうねるような響きと共に開幕が告げられた。孔子の言葉「朋あり遠方より来たる、また楽しからずや」の声が場内を揺るがす。それは中国歴史5000年の響きであった。

    

 中国絵画伝統の絵巻物が静かに広がってゆく。1000年前の古琴が奏でられる中を、伝統の墨絵がかかれていく。それが現代流のボディーアクションペインティングで描かれていく。現代と伝統と歴史の奥深さを表現したのが今回の開会式であった。この不思議な、魅力ある演出に吸い込まれた。役割の違う2万人の出演者たちの入場、そして退出などが寸分の狂いもなくスピーディーにスムーズに行われていく。私はカメラで撮影することすらも忘れてしまっていた。

 世界最高の映画監督、張芸謀・総監督に心から敬意を表したい。張芸謀の得意とする「鮮やかな色彩と華やかさ」を感じ、次には躍動感を目にして、その演出とスピーディーな進行に感動しながら見入っていた。知らず知らずのうちに、私は手にしたデンデン太鼓を回し、体でリズムをとりながら感動を表現していた。

 中国の世界に誇る4大発明である「紙」「火薬」「羅針盤」「活版印刷」をテーマにした舞台が繰り広げられていった。張芸謀の演出に、世界の元首たちも皆、のみ込まれてしまっていただろう。

感動、感動……の4時間半

 中国は、大航海術を明時代(1400年頃)に確立し、外国訪問を繰り返したが、他国を侵略することには使わなかった。火薬を使っての侵略戦争もしなかった。海のシルクロードなどの交易はしたが、戦いはしなかった。西洋列国はそうではなかったのは歴史が証明している。この中国歴史の意味をこめて、活版印刷の演出に「和」の文字を浮かび上がらせた。人の力で完成させたもので、人が「平和」をつくるのだということであろう。

 聖火台の点火も意表をついたもので、聖火を受け継いだ最終ランナーが、会場の大屋根の周辺をワイヤで吊されて会場をランニングしながら一周した後、点火した。テンポが速く進行し、すべての出演者が駆け足であった。音も立てずに現れ、スルスルと消えてゆく。出演者の2万人を制御することは困難であったが、どのようにしていたのであろうか。きっと中国人の持つ文化性であろう。

 選手入場で最終入場国・中国のとき、四川地震で学校が倒壊した際、同級生を助けた子供が中国選手団の旗手を務めた姚明選手の横を並んで進行するはずが、実は厳重警備のため、その子どもが中に入れなくて、入場進行が8分遅れるという、誰も気がつかなかったハプニングがあった。 

 開会式の4時間30分が、あっと言う間であった。会場の「鳥の巣」には、観客9万人、選手団1万人、出演者2万人、警備員2万人、ボランティア2万人、合計16万人の人が集結していたが、なんらの不備もなく、スムーズに華やかに、スピーディーに行われたことに心からの敬意を表したい。

 開会後、9万人の観客は支障もなく、てきぱきと退出して、車に乗れてスムーズにホテルに帰れたのも驚異であった。

 私は、この開会式を「文化の金メダル」と称した。過去の歴史にもないし、今後も生まれないでしょう。このようなすばらしい開会式を鑑賞できたのは、生涯の誇りであった。感動、感動……。(中川美術館長 中川健造)

 

「人民中国」より

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