人と人とのコミュニケーションは、私たちの生活の中で大変重要な役割を果たしています。その一方で、言語の違いは自由にコミュニケーションする上で障害となっています。経済のグローバル化、五輪開催といった国際的な活動では、言語の壁を乗り越えた新しいコミュニケーションを可能にする技術に大きな期待が寄せられています。
こうした中、日本の代表的な情報通信研究機関である独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が開発した「携帯電話音声翻訳サービス」の実験が、8月7日から12日まで北京市内で行われました。
この「携帯電話音声翻訳サービス」はNICTが20数年前に開発を始めたものです。携帯電話に音声翻訳ソフトを予めダウンロードしておけば、キー操作によりある言語から別の言語に音声翻訳されるというものです。現在、英語と日本語、中国語の3言語による音声翻訳サービスが、日本の一部の携帯で実証実験されています。
北京での実験では、インターネットを通じて携帯電話と日本国内のサーバーにつなぎ、日本語と中国語を自動的に通訳するものです。携帯に日本語を吹き込むと、数秒後に中国語に翻訳された音声が送り返される仕組みです。このほか、ビジネス手帳大の小型パソコンを使った「音声翻訳専用機」での実験も行っています。従来は大型サーバーを用いていたものを、手のひらに載る小型化を実現したものです。
実験に参加したモニターのアンケート結果によれば、音声翻訳技術への期待は大きく、自動音声翻訳機を早く実用化して欲しいという声が多かったほか、携帯電話でも音声翻訳が実現されたことに、技術がここまで進歩していると驚きの声が聞かれました。NICTは今後、地名やレストラン、品物の名前などをより多く盛り込むほか、ソフトの改良を進めながら、より使いやすいシステムを開発していくとしています。また、東南アジアの17言語を対象にしたシステムの開発も進めていくということです。
この開発は、関西にあるNICTのけいはんな研究所が、いつでも、どこでも、だれでも、何でも、どんな方法でも自由にコミュニケーションができる環境の整備に向けたMASTARプログラムの一環として進められています。(文:王秀閣)
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