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「一帯一路」国際協力サミットに見た希望と課題

2017-05-18 10:48:39     cri    

 北京の天安門には毛沢東主席の肖像画が掲げられていることは多くの方がご存じだと思います。その両脇に書かれているスローガンをご存知でしょうか。向かって左に「中華人民共和国万歳」右に「世界人民大団結万歳」とあり、建国の崇高な理想を現しています。この数年、中国は「中華民族の偉大な復興という中国の夢」を強調し、外国人の私から見れば前者の追求にやや傾いているという印象がありました。しかし、今回の「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの開催により、中国は後者を忘れておらず、国際協調を進めていくことがはっきりと示されました。130あまりの国・地域から関係者が参加したこと、特に29カ国の国家元首が出席して共同コミュニケが発表されたことは非常に大きな意義があったといえます。

 経済的に見れば、中国は「自力更生」「対外開放」「WTO加盟を契機とした国内・国際ルールの一本化」といったステージを経て「新たな国際経済秩序・枠組みの構築」という段階、いわば「第4ステージ」に入ったといえ、今回のフォーラムはそのことを世界に宣言する絶好の舞台となったと思われます。

 フォーラムでは、政策、インフラ、貿易、金融、民心等、あらゆる分野での交流をスムーズにしていく「五通」が主題となり、その実現のためのプランが習近平主席の開幕式でのスピーチで取り上げられ、共同コミュニケにも盛り込まれました。すでに「五通」に基づく具体的な取り組みが行われていますが、今回のフォーラムをきっかけに更に加速していくはずです。

 現場で中国との交流を進めていますが「一帯一路」が単なるスローガンでないことを実感します。例えば地球上のノートパソコンの約3分の1が重慶市で生産されており、さらにその中の3分の1が「中欧班列(中国‐欧州貨物専用列車)」で中央アジアを経由し欧州に運ばれています。中国はこの流れをさらに加速するため、運送書類、貨物輸送電子データ、通関・検疫ルールの統一・共有について旧CIS諸国やEU諸国と協議を進めています。現状は中国からの貨物が多く、欧州から入ってくる貨物が少ないという不均衡問題が突出していますが、中国国内の巨大市場や購買力を考えれば徐々に改善していくでしょう。また、日本の大企業は中国や欧州にネットワークを持っており、日本がこのような枠組み作りに参画していくことは、日本‐欧州間の貨物を中国の鉄道を利用してより迅速・安全・廉価で輸送できることにつながり、日本経済にとってもメリットがあり、中国が抱えている貨物量不均衡問題の解決にもプラスになるでしょう。

 このように「一帯一路」構想や今回のフォーラムは高く評価されるべきですが、一方で中国には大きなチャレンジが待ち受けています。例えば、金融面で更なる利便性の向上を図れば世界各国から人民元の資本項目自由化がより強く求められるでしょうし、コミュニケーションを多様化・活発化しイノベーションを引き出すには言論空間をより広げ、情報の価値判断を政府ではなく民衆に委ねていく必要も出てくるでしょう。また、中国と他国の間で互いの「核心利益」が正面衝突した場合でも、既存の協力への影響を最小限に抑える仕組みも早急に構築する必要があります。

 中国が自身に多少のマイナスが出ることがあっても「一帯一路」の理念の下、世界全体の利益を考え取り組みを進めていくことを期待します。そうすることが中国への尊敬の念を集め、結果的に中国の発展にもつながり「中国の夢」の実現を後押ししていくでしょう。

執筆:泉川友樹(団体職員)

 

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