隋 唐 洛 陽 城 鳥 瞰 図

1 宮城　 2 含嘉倉城 　3 南市　 4 上清宮 　5 回洛倉城 　6 月陂 　7 積翠池

　隋唐洛陽城は現在の洛陽市の直下にある。都城遺址は、外郭城、宮城、皇城、東城、含嘉倉城（がんかそうじょう）、圓璧城（えんへきじょう）、曜儀城（ようぎじょう）の宮殿区と、市場や住居が展開する坊条区とに分かれている。現在洛河がこの都城遺址の中央を東西に貫いており、宮殿区は洛河北岸の高台に位置している。１９５４年以後、中国社会科学院考古研究所洛陽工作隊が継続的に発掘調査を行っている。近年、洛河南岸に市の行政区を移転する大事業が行われており、その区域は隋唐洛陽城を保護（公園化）するためこれを避けるようにプランニングされている。

　宮殿区の諸施設は市街地の直下にあって地上面で観察することはできない。継続的に発掘調査が行われており、これまでに武周明堂（ぶしゅうめいどう）、応天門（おうてんもん）などが発掘され、現在その一部は復元されている。注目すべきは含嘉倉で、宮殿区の東北、圓璧城と曜儀城の東にある。倉穴２８７基（全体では推定４００基）並びに城壁、城門、街路が発見されている。南北約７２５m、東西６１５m、総面積は約４３万平米、倉穴の形状は逆円錐形を呈し、口径は１０~１６ｍ、深さは７~９ｍである。１５０万の人口が１年半食べられる穀物が蓄積されていたといわれる。洛陽市の北側、隋唐洛陽城の城外では、隋の穀物貯蔵庫であった回洛倉（かいらくそう）も最近確認された。

　　　　応天門遺址（復元）

　外郭城の形態はボーリング調査によって確認され、南辺が広く北辺が狭い台形になっている。西南部に出っ張りがあり、この形態については諸説紛々している。南城壁は７２９０m、城壁のラインは現在の古洛渠（こらくきょ）を目安にするとよい。東城壁は７３１２m、焦枝（しょうし）鉄路を目安として考えるとよい。北城壁は洛陽東駅の北側にあり、その長さは６１３８mである。西城壁は市の中心部、王城公園のすこし東側を南北に走る。その長さは６７７６mである。外郭城の周長は２７５１６m、すべてが地中に埋没しており、現在地表面で確認できるところはない。外郭の城門は南門３、東門３、北門２、西側には門はない。南城壁中央やや西よりに都城の正門である定鼎門（ていていもん）がある。宮城が西に偏っているため定鼎門もやや西に偏っている。杜子春（とししゅん）が居眠りをしたのはこの門であるともいわれる。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　隋唐窯址　

　外郭城内では、洛河の南側で南北１２条の街路が、北側で南北４条東西３条の街路が確認されている。これらの街路は縦横に交差し里坊を形成している。洛水の南側に８１坊と西市および南市、北側に２８坊と北市、全体で１０９坊と３市があったとされる。郭内では西域との交易も展開された南市、唐代随一の詩人白居易（はっきょい）の故居などが発掘されている。

上清宮遺址

　また、東城郭の際には大福先寺（だいふくせんじ）がある。天平の甍（てんぴょうのいらか）の舞台、第９次遣唐使の際入唐し鑑真（がんじん）を招来した栄叡（ようえい）、普照（ふしょう）の逗留した寺である。明代の洪水によって埋没したため、旧地の北側に建て替えられたのが現在の寺院である。

　　　　　　　西苑宮殿遺址全景

　　　　宮殿遺址（左端高台）、主殿遺址（中央微高地）、後殿遺址（中央高台）、前殿遺址（右微高地）、門闕遺址（右端）

　外郭外の主な遺跡としては、テン河河岸（主に東岸）の窯群址、則天武后の上清宮（じょうせいきゅう）遺址や西苑（せいえん）宮殿遺址などが残存している。

　洛陽市の周囲には唐三彩などを伴出する墓葬が頗る多い。２００５年には唐高宗（こうそう）太子李弘（りこう）の妾とされる大型壁画墓が２基発掘された。墓道の両側には胡服の官僚、馬や駱駝を引く西域商人が画かれており、西域文化が漂っている。

　なお、宮殿区の西側には東周王城（とうしゅうおうじょう）がある。東周王城の形をそのままスライドさせると隋唐洛陽城の形態となる。隋の煬帝（ようだい）も周を意識して洛陽を計画していることから、東周王城を取り込む形で都市プランが設計されたと考えられる。東周王城のさらに西には周回６０キロにもおよぶ広大な西苑が展開している。

　　　　　　西苑宮殿後殿遺址 

　隋唐洛陽城の最盛時は唐の女帝則天武后（そくてんぶこう）によって現出され、龍門石窟奉先寺（ほうせんじ）には大仏も建立された。武后の愛した牡丹が現在も洛陽で咲き誇っている。

（中国洛陽外国語学院　特聘教授　塩沢　博仁・考古学）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　現在の大福先寺