北京の西部、官園という場所に、生き物を扱う大きな市場があります。小鳥、ネコ、ウサギ、金魚、熱帯魚などが並ぶちょっとした動物園のような市場です。ここには生き物だけでなく、それを飼うための道具を売る専門店があります。
小鳥の道具の店では、竹の鳥籠、餌入れ、水入れ、とまり木や籠にかける布製のカバーなど。中国の愛鳥文化の奥深さが伝わってくる豊富な品揃えです。特に景徳鎮や広州で作られるという小鳥用「食器」は、何十種類もあって思わず眺め入ってしまいます。
それは、獅子やザクロ、ぼたんの花、コウモリなど、中国伝統の吉祥模様の手描きがついた、愛らしいもの。飼い主は趣味と予算にあわせ、餌入れ、水入れ、それに鳥によっては必要な活餌の虫入れ、と一揃いを選ぶのです。
かつて富貴の身分の人々にとって、小鳥を飼う楽しみは道具に凝る楽しみでもありました。往時の上等の餌入れなどは、コレクションの対象にもなっていて、数千元もするものも珍しくありません。市場に並ぶ小鳥用の磁器には、今でもその伝統が垣間見えているようです。
飼い主よりも上等の食器で毎日を優雅に過ごしているーー中国には、そんな小鳥たちも少なくないのです。(文・原口純子)
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