今、北京のあちこちで、茶色の紙袋を抱えて、この土家族焼餅をほおばる姿が見られる。この少数民族伝来の日本のお好み焼き状のスナックが北京っ子たちに大受けなのだ。
北風が吹きすさぶ寒空にもかかわらず、土家族焼餅の店の前は長蛇の列が出来る。安くて美味しい小吃(簡単な食事)には目がない学生達をはじめ、お年寄りから子供まで、香ばしい香りに引かれて列がどんどん長くなっていく。
竹で作られた店構えが独特の「土家族焼餅店」は北京市内に今やどんどん"増殖"しつつあるチェーン店。土家族焼餅は直径20センチくらいの丸型。見た目はまさに日本のお好み焼きを乾かした感じで、中央がやや薄くなっていて、そこにミンチ肉が乗っている。かりっと程よく焦げた餅には、秘伝のタレが塗ってあり、ジューシーな肉の香りとともに食欲をそそる。外はサクサク、中はふんわり・・日本で売っていれば思わず人に勧めたくなる"B級グルメ"の一つになりそうな一品だ。
この小吃、元々は湖北省に住む「土家族」という少数民族に伝わる食べ物で、少しずつ改良を重ね、現在の形が完成した。どんなに行列が長くても、すべて手作り。だから、よけいに長い列が出来てしまうのだが、この待ち時間が長ければ長いほど、焼餅を一口かじったときの感激も大きくなるというもの。
一個2.5元(約35円)。今や北京市内のあちこちにチェーン店があり、また類似店も増えているから、市内をぶらぶらしていれば、簡単に見つかる。初めて食べるのに、どこか懐かしさを感じる味・・北京に来たら、気軽に楽しみたい"B級グルメ"だ。(撮影・文:朝倉 浩之)
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