IAEA・国際原子力機関のエルバラダイ事務局長は、15日、ウイーンにあるIAEAの本部で、35の理事国にイラン核問題に関する報告書を提出しました。報告書では、「イランには、積極的な協力姿勢がみられない」と指摘しています。
エルバラダイ事務局長は、報告の中で、「イランは、IAEAがその核施設に入って査察することに同意し、提出した質問に答えた。また、『遠心分離器』問題では協力の姿勢を示した」と述べました。
一方、エルバラダイ事務局長は、イランがその核開発計画の中で、未解決の問題に示した態度に不満の意を表しました。「イランは、依然として、国連安保理の関連決議を無視し、ウラン濃縮活動を続けている」とした上で、「イランは、核開発計画に関して透明度を増やしたのは、IAEAと協議したからだ。イランの協力は、受動的なもので、積極的ではない」と指摘しました。
この報告書に対して、イランとアメリカ、イギリスなどの西側諸国は、それぞれ異なる反応を示しました。
イランの核交渉責任者、ジャリリ最高安全保障委員会事務局長は、15日、報告書に対して歓迎の意を表したものの、「イランの核開発は、軍事用の目的であることが証明されたという報告書の内容はうそだ」と反発しました。また、記者会見で、イランの核問題を国連安保理に諮った国際社会のやり方を非難し、「この報告書は、イラン核問題を国連安保理で取り上げる根拠を打ち砕いた」と述べました。
ジャリリ事務局長は、さらに、国連安保理が採択したイラン制裁に関する二つの決議を非難し、「安保理が、さらに新しい制裁決議を採択すれば、イランがIAEAに対して行う協力に悪影響を及ぼすだろう」と語りました。
ところで、アメリカ政府は、報告書が発表されたこの日、「イランは、国際社会を無視している。核開発に関する未解決の問題への解答は、不完全なものだ」と指摘しました。ホワイトハウスの報道官は、15日、「イランがウラン濃縮活動の停止を拒否したことに対して、アメリカは、フランス、イギリス、ドイツ、中国と協力して、三つ目のイラン制裁法案を提出するつもりだ」と述べました。
また、イギリス政府は、イランの釈明を促すと共に、「ソラナEU共通外交・安全保障政策上級代表が今月中に、イランの核問題に関する報告書を提出する予定で、その中に、『積極的な成果』がなければ、イギリスは、国連安保理やEUと協力してイラン制裁を発動する」との意向を示しました。
さて、エルバラデイ事務局長のこの報告書は、すでに、IAEAの35の加盟国に配布されました。加盟国は、今月22日、会議を行う予定で、その際、イランに対して不利な結論が出れば、アメリカやイギリス、フランスなどの国は、イラン制裁を発動するよう国連安保理に求めると見られています。
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