イスラエルの内閣は、19日、採決を行い、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスが制圧しているガザ地区を「敵対的実体」と決定すると同時に、経済制裁を実施すると表明しました。これは、ガザ地区の武装勢力がイスラエルに対してロケット弾による襲撃を継続していることに対して行ったものです。
報道によりますと、ガザ地区の武装勢力は、過去7年間で、イスラエル南部の都市に数千発ものロケット弾を打ち込み、数十人の犠牲者を出したということです。これに対して、イスラエルは、空襲、暗殺作戦、国境線封鎖、貿易制限などの対策を取ってきましたが、効果がありませんでした。今月11日、イスラエル南部の軍事基地はまたロケット弾による襲撃を受け、600人余りの兵士が負傷しました。これらを受けて、オルメルト政権は国内からの大きな圧力を受けるようになっています。
このような状況の下で、イスラエルの内閣は、ガザ地区を「敵対的実体」としたわけです。この決定は、「国際法に違反しない」前提で、ガザ地区に対して、電力や燃料の供給を削減することを含む一連の厳しい制裁措置を打ち出しています。しかし、この決定は、多くの面からの困難に直面する恐れがあると考えられます。
まず、国際法です。制裁を実行すると共に、水、食品、医療衛生の設備、電力など、ガザ地区における人道主義的問題は考慮していると、イスラエルは主張しています。しかし、これに対して、国連の高官は、「このような制裁は、国際法に違反している。イスラエル軍は2年前ガザから撤退したものの、今現在、まだガザの国境線、領空、領海を支配しており、ガザ地区の住民の生活必需品の供給を保障する義務がある」と述べ、「制裁は、ガザ地区の情勢を一層悪化させ、地元住民全体に不利益をもたらすだけだ」と指摘しました。国連のパンギムン事務総長もこの日、声明を発表し、イスラエル政府の決定に関心を寄せ、考え直すよう、イスラエルに呼びかけました。
次に、ハマスがそう簡単に屈することは思えないということです。ハマスは多くのロケット弾襲撃に直接参与していないものの、このような襲撃の発生自体を食い止める行動も取っていないとみられます。イスラエルは、今回の制裁により、ハマスに対してそれなりの責任を負うよう強いることを狙っています。このほか、イスラエルのバラク国防相も、「制裁の目的はハマスの力を弱めるためでもある」と述べました。これに対して、ハマスの報道官は、「イスラエルの決定は、『宣戦』であり、パレスチナ人へのテロ行動だ」と、強い姿勢を見せました。
また、パレスチナとイスラエルの和平交渉や11月に開かれる中東問題に関する国際会議にも不利に働くとみられます。ガザ地区への経済制裁の決定は、アメリカのライス国務長官とイスラエルのリヴ二外相の会談後に下されたという点に、注目すべきです。これについて、関係者は、「この制裁に関して、アメリカとイスラエルが足並みをそろえているのは、ハマスを攻撃し、アッバスを助けるという一貫した政策の表れであるが、あまり力を入れすぎると、物事がかえって思うとおりに運ばないおそれがある」と懸念しています。実際、多くのパレスチナ人やメディアは、イスラエルや西側諸国に依存しすぎることで、今後の交渉で強行姿勢を取らざるを得なくなると、批判しています。
最後に、経済制裁の決定は、イスラエルの国内政界でも受け入れられていません。右派のシャス党は、これは遅すぎる決定だと不満を示す一方、左派のメレツ党は、「オルメルト政権は、平和を政権公約として生まれたのに、今は『宣戦』へと傾いているようだ」と批判しています。
これらの理由から、イスラエル政府は軽率に制裁実施に踏み出すことはないだろうと、専門家は分析しています。(朱丹陽)
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