イラクのシーア派とスンニ派の代表はこのほど、フィンランドで4日間にわたって秘密会合を開きました。この会合で、北アイルランドや南アフリカの和平プロセスを参考した「イラク和平ロードマップ」を発表し、国内の宗派・民族対立の解消に向けてたゆまず努力していくことで合意しました。これについて世論は、この両派が、アメリカの参加なしで初歩的な合意を達成したことは、「イラク人が自らの手で国の未来を決めよう」というシグナルであると見ています。
今回は、シーア派のイスラム革命最高評議会やサドル氏、スンニ派のイラク合意戦線の代表ら16人が、フィンランドで秘密会合を行いました。会合では、宗派・民族の対立問題の解決策を探るため、北アイルランドや南アフリカの代表を招いて、それぞれの和平プロセスの経験を紹介してもらいました。また、会合では「ヘルシンキ協定」(通称「イラク和平ロードマップ」)という文書を発表しました。文書には、あらゆる暴力行為の停止や非暴力・民主的手段による政治問題の解決、交渉中の武装活動の禁止、および非政府武装勢力の武装解除を監視するための特別委員会の設置など、提案12項目と政治目標9項目が盛り込まれています。代表らは、民族和解を目指して、この「イラク和平ロードマップ」をもとに交渉を続けることを約束しました。
世論は、この「イラク和平ロードマップ」について、北アイルランドの和平プロセスの鍵となる原則を導入し、「暴力の停止」や「段階的な武力放棄」という2つの目標を立てているとしています。また、もし、シーア派とスンニ派が、アイルランド共和軍のように「無期限の停戦」を宣言することができれば、民族和解プロセスの開始に重要な条件を作ることになると見ています。しかし一方で、その実現は極めて困難だという声も挙がっています。
その理由としてまず、シーア派とスンニ派は武装勢力を多く抱えており、国際テロ組織「アルカイダ」もイラクで活動しています。このため、イラクで「暴力の停止」や「武力放棄」を実現させることは、北アイルランドの和平プロセスより複雑だと見られます。
また、外国軍隊の駐留も障害となっています。イラクで起きた暴力事件の多くは、アメリカ軍が主導する多国籍軍に対するものです。そのため、外国の軍隊がイラクから撤退しないかぎり、「暴力の停止」は実現できないでしょう。
そして、「武力放棄」は、各宗派・民族の政治・経済の利益にかかわっています。そのため、各宗派・民族が憲法の改正や軍の再建、石油の分配などで一致しなければ、「武力放棄」は実現できません。
専門家は、イラク問題は宗教や歴史など、さまざまな要素が複雑にかかわっているため、1度や2度の交渉によって大きな進展は期待できないと見ています。しかし、「イラク和平ロードマップ」では、「暴力の停止」や「武力放棄」といったイラク問題解決の方向を示しました。また、シーア派とスンニ派の代表は会談後、フィンランドに戻って交渉を継続する意欲を示しています。これは、関係改善に向けた積極的なシグナルと言えるでしょう。(翻訳:鵬)
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