国連安保理は10日、全会一致で1770号決議を採択しました。
決議によりますと、イラク支援派遣団の任期を1年延長し、国民和解の促進、国境の安全保障やエネルギー、難民問題での周辺地域との対話など、イラク政府と協力するということです。
決議はまた、イラク復興関連の国際契約を履行し、武装勢力メンバーの社会復帰を支援すると明記しています。
安保理の2003年8月の決議で、イラク支援派遣団を創設しましたが、派遣団の任務は選挙支援と人権状況監視にとどまっています。
現在、イラクに派遣された国連職員は65人で、今年10月に30人が増員される予定です。
今回決議の草案はアメリカとイギリスが合同で提案したもので、採択されたことにより、イラク戦争による国連とアメリカの緊張が緩和されたと見られています。
2003年、アメリカとイギリスは安保理決議を得ずに、イラク戦争を開戦し、国連の権威性を損ない、当時のアナン事務総長の不満を招きました。
また、「石油と食糧の交換計画」の国連人道支援事業をめぐり、巨額な不正疑惑が浮上したため、アメリカはアナン事務総長に大きな圧力を加えました。
2003年8月19日、バグダッドの国連事務所が爆破テロを受け、デメロ特別代表を含め、22人が死亡しました。
これを受け、国連はイラクでの活動を停止しましたが、2004年4月、活動を再開しました。
今年1月、パン・ギムン事務総長が就任し、アメリカの支持を求めています。
一方、アメリカは泥沼化しているイラク情勢と内外からの圧力増大に直面しており、国連との協力の重要さを意識しています。
アメリカのハリルザド国連大使は「国民和解や人道的支援、イラクと周辺国の交渉協力の促進で国連は比べものにならない優位性をもっている」と明言しています。
決議の採択でパン・ギムン事務総長は「国連はイラクの国民和解と平和実現に力を尽くしていく」と述べました。
しかし、イラクの治安情勢が好転していないため、国連内部では派遣職員の人身の安全が憂慮されています。
今月7日、国連職員組合は、イラクの治安が安定するまで職員増派を実施しないよう、パン・ギムン事務総長に申し入れました。
これに対し、アメリカ政府はバグダッドの国連事務所再建と安全保障に1億3000万ドルを拠出すると決定しています。 (ジョウ)
|