このほど天然ガス問題で膠着状態にあったロシアとウクライナは4日、モスクワで天然ガス供給についての5年契約を締結しました。

　ウクライナは、結局ロシア側が提起した千立方メートルあたり230ドルの価格を受け入れたことで、一見ロシアが交渉で勝利したかのように見えますが、実のところ、お互いに譲歩した結果です。

　双方は、ウクライナ向けのロシア産ガスの価格を千立方メートル当たり、現行の50ドルから230ドルに引き上げることで合意すると同時に、ウクライナは、トルクメニスタンやカザフスタンといった中央アジアからの天然ガスをロシア産ガスに混ぜることにより、95ドルで購入する権利を得ました。また、ヨーロッパに送られる天然ガスのウクライナ通過料も百キロメートル当たり、1.09ドルから1.6ドルに値上げされました。

　天然ガス問題での合意について、双方は積極的に評価しています。ロシアのプーチン大統領は、「交渉の決着は、両国関係の発展にプラスとなり、ロシアのEU・欧州連合向けの天然ガス輸出にも安定した条件を保障した」と述べ、また、ウクライナのユーシェンコ大統領は、欧州向けの天然ガスの輸送義務を果たすと約束し、「ウクライナは、EUとロシアの頼りになるパートナーである」としています。一方、影響を受けていたEU諸国も4日、共同声明を発表し、歓迎の意を表しました。

　専門家は、「経済的な面からみると、あたかもロシアの全勝のようではあるが、千立方メートルあたり95ドルという価格は、ロシア価格と中央アジア価格を足して2で割ったものにすぎない。しかし、ロシアが1ヶ月前に提出した要求は事実上受け入れられたことで、そのエネルギー外交における実力を世界に示したことになる」としてます。

　しかし、今回の交渉でロシアにもいくつかの損失があります。第一に、ウクライナ向けのガス提供を停止したことによって、ウクライナ国内では、反ロシアの気運が生まれ、両国関係の改善に悪影響を与えました。第二に、西側の投資者とエネルギー消費者にとって、その経済的なパートナーとしての信頼性が問われることになりました。第三に、ロシアのガス供給停止の行動は、独立国家共同体の国々にエネルギー面でロシアに頼っているという現状を変えさせるきっかけとなり、ロシアのエネルギー外交が効果を失っていく恐れがあるということです。

　これに対し、ウクライナは、合意に達したことで損ばかりしたとは言えません。ロシアとウクライナの政治評論家は、「ユーシェンコ大統領は、もともとロシアが要求した価格を受け入れるつもりだったが、交渉を長期化させたのは、国民の反ロシア感情を煽り、3月の議会選挙に備えるためだ。また、ユーシェンコ政権は、ロシアの経済侵略に反抗することで、政治的には、更にヨーロッパに近づき、西側諸国と独立国家共同体のその他の国々からの支持を得ることを図っている」と分析しています。しかし、ユーシェンコ政府は天然ガス価格をめぐる紛争を解決する際、故意に交渉を延々と引き伸ばし、また、ロシアに「欧州への天然ガス輸送を不法にせき止めた」と非難されたことで、国際社会におけるウクライナのイメージが大いに汚され、国内の野党にユーシェンコ政権を攻撃するチャンスを与えたという見方もあります。