ロシアとウクライナは、2006年のロシアからのウクライナへの天然ガス供給価格について合意できなかったため、ロシアの大手ガス企業『ガスプロム』はこの1日からウクライナへのガス提供の実質的中止を発表しましたが、これによって、天然ガスの価格をめぐるロシアとウクライナとの紛争がエスカレートされました。この事態は、ウクライナを通じてロシアから天然ガスの輸入をしているドイツ、ポーランドなどに懸念を抱かせています。

　専門家はこれについて「ロシアとウクライナとの天然ガス紛争は、経済的な問題だけではなく、両国の政治上の食い違い状態をエスカレートした」と見ています。

　これまで、ロシアは旧ソ連時代の価格でウクライナやその他独立国家共同体のメンバーに低い価格で原油と天然ガスを提供していました。しかし、2005年に入ってから、ロシアは独立国家共同体メンバーへのエネルギー供給政策の修正に着手し、国際市場価格で、共同体諸国にエネルギーを供給することを始めたのです。そしてロシアとウクライナは去年5月からこのことについて交渉を始めましたが、現在に至っても合意に達していません。ロシア側は天然ガスの1000立方メートルあたりの価格をこれまでの50ドルから220ドルないし230ドルに引上げることを堅持していますが、ウクライナ側は国内関連企業の損失を軽くするため、天然ガス価格の段階的な値上をロシア側に希望しているのです。こうして双方の立場が大きく異なり、交渉は行き詰まり状態に入りました。そして去年の12月31日の午後、ロシアのプーチン大統領は2006年の第1四半期は、依然として、2005年の価格でウクライナに天然ガスを供給するよう国営ガス企業『ガスプロム』に指示したのです。ですからウクライナ側は当日以内にロシア側と2006年の第二四半期から市場価格によってロシアから天然ガスを購入することについてのロシア側との契約に調印すべきだったのです。しかし、ウクライナ側はロシアのこの要望に明確な返答を出さなかったため、ロシア側はこの1月1日からのウクライナへのガス供給の中止に踏み切ったのでした。

　ところで、ウクライナの天然ガスの年間消費量は約800億立方メートルで、そのうち、250億立方メートルはロシアからの輸入に頼っています。ですからロシア側のガス提供停止の発表を受けて、ウクライナ側は「今の天然ガス供給量は住民の需要を完全に満すことができ、その日常生活に影響することがなく、パニックは起こっていない」と表明しました。しかし、ウクライナ政府は緊急対策本部を設け、事態が起こしうる緊急状況に注目しています。このほか、ユーシェンコ大統領は、ウクライナは1月1日から合理的な市場価格でロシアから天然ガスを購入するが、1000立方メートル当たり230ドルには同意しないと表明し、さらに「ウクライナはその他のルート通じての天然ガス獲得に積極的に当たっている」と強調しているのです。

　伝えられるところによりますと、ウクライナはすでに、トルクメニスタンと協議に達し、今年の1月1日からの1年間、1000立方メートルあたり50ドルという価格による400億立方メートルの天然ガス獲得に成功したということですが、これによって、ウクライナの天然ガス不足の問題はなくなったということです。

　ロシアとウクライナ双方は、いまウクライナを通じての欧州への天然ガス輸送問題について争議を行っていますが、ロシアのガス企業『ガスプロム』のスポークスマンは1日、ウクライナは自国を通じての欧州へ輸出天然ガスを不法に止めていると非難し、ロシア外務省もこれについてウクライナに警告を発しました。これに対し、ウクライナ天然ガス企業は、ロシアの『ガスプロム』は、2002年6月に双方が調印した2003年から2013年までのロシアのガス輸送パイプラインのウクライナ国内通過に関する契約に違反していると反駁しているのです。