アメリカのチェイニー副大統領は18日、予告なしにバグダッドに入り、イラクへの一日だけの電撃訪問をしました。これは、2003年11月、ブッシュ大統領が感謝祭の日に突然イラクを訪問して以来、アメリカの最も高いレベルの指導者のイラク訪問です。

　明らかにされたところによりますと、チェイニー副大統領は、「テロへの取締りに関する歴訪」をテーマに、オマーン、アフガニスタン、エジプト、パキスタン、サウジアラビアの五ヶ国を訪問する予定でしたが、イラクへの訪問は公表されていませんでした。

　イラク訪問中、チェイニー副大統領は、移行政府のタラバニ大統領、ジャアファリ首相と会談し、また、イラク駐在のアメリカのカリルザード大使、アメリカ駐留軍のケーシー司令官、アビザイド中央軍司令官とそれぞれ会見しました。そのほか、イラク兵の訓練の模様を見学し、イラク選挙の安全担当のアメリカ軍と一緒に昼食を摂り、演説も行いました。

　アメリカ軍司令官と会談後、チェイニー副大統領は記者会見し、「終了したばかりのイラク選挙は素晴らしかった。イラクは、選挙を通じて、各階級の民衆を団結させ、安全の責任を負うことができる」と述べました。アメリカ国内で最近、アメリカ軍がイラクから撤退するよう強く求められていることに対して、チェイニー副大統領は演説の中で、「アメリカはイラクから撤退しない。撤退すればテロリズムとの戦いは失敗に終るに違いない」と強調しました。

　アラビアのメディアは、チェイニー副大統領の電撃訪問は、イラク議会選挙終了後、暴力活動が再び台頭してくる背景があると分析しています。選挙後、イラク人は正常な生活に戻ると同時に、暴力の襲撃にもさらされています。17日と18日、イラク全土で一連の襲撃事件が発生し、少なくとも19人が死亡しました。17日夜、バグダッドと北部地区で、8人のイラク安全部隊員を含む13人のイラク人が襲撃を受け、死亡しました。そして18日、バグダッドと北部地区でそれぞれ自動車爆弾テロが発生し、イラクの警察パトロール隊隊員3人、イラク女性１人がそれぞれ死亡しました。そのほか、アメリカ軍は、イラクの地方で１人のイラク人を射殺し、１人にけがをさせました。

　専門家たちは、チェイニー副大統領の今度の訪問は、二つの目的があると見ています。その一つは、イラク民主政治プロセスで収めた成果をアピールすることです。もう一つは、「テロリズムとの戦い」という名目でアメリカ軍を引き続きイラクに駐留させていく立場を表明するためです。しかし、アメリカ軍がイラクに駐留するのはイラク戦争以来、イラクの安全情勢が悪化しつつある根本的な原因だと見られ、ザルカウィ氏をはじめとする外国の武装勢力とイラク国内のスンニ派武装勢力は、アメリカ軍がイラクでの駐留を継続さえすれば、アメリカ軍とイラク政府への攻撃をやめないと表明しました。

　選挙後、民主政治プロセスがイラクに安全と安定をもたらすことができないなら、そしてアメリカはイラク問題を解決できなかったら、イラクとアメリカ国民は、アメリカ軍の撤兵をさらに強く求めるでしょう。専門家たちは、チェイニー副大統領のイラク電撃訪問はアメリカのイラク問題の解決にあまり役に立たないと見ています。