イラクのフセイン元大統領や、他の7人の元政府高官、バース党のメンバーに対する第2回公判が28日行われました。イラク高等裁判所で重要な証言と映像が提出され、フセイン元大統領に対する公判は実質的な段階に入りました。

　第2回公判でフセイン元大統領は主に六つの告発、特にドジャイル村住民の虐殺事件についての告発を受けています。1982年7月、フセイン元大統領の車列がバグダッド北方ドジャイル村で襲撃を受けました。その後、フセイン元大統領はドジャイル村の143人の村民を殺害する命令を下しました。フセイン元大統領と旧政権の7人の元政府高官が虐殺命令を下すと共に、虐殺を監視したとされています。また、フセイン元大統領は、1990年8月クウェート侵攻の命令を下したこと、南部シーア派、北部クルド人の反フセイン運動を鎮圧したこと、1987年と1988年、クルド人を虐殺し、シーア派とクルド人の指導者、政治過激派の人々を暗殺したなどの告発を受けました。

　裁判で、フセイン元大統領がドジャイル村の住民虐殺命令を下し、その様子を監督する映像が放映されたり、元情報員ハリド・シェイク氏の証言も示されました。しかし、出廷する予定だった検察側の10人の証人は当日裁判所に現れませんでした。

　フセイン元大統領に対する第2回公判により、再びイラクではデモ行進と暴力活動が湧き起りました。26日から、首都のバグダッド市中心とイラク南部のシーア派の聖地であるナジャフでデモ行進が発生。デモの参加者は独裁者を絞殺せよなどのスローガンをかかげました。28日の公判当日、フセイン元大統領の故郷であるティクリットの住民が町に出て、フセイン元大統領に声援を送りました。第2回公判開始の数時間前、武装勢力はバグダッド南部でバスを襲撃し、2人のイギリス人を死亡させました。この他、イラク高等裁判所の所在地であるバグダッドのグリーン地区が砲撃を受けました。

　アミン裁判長によりますと、次回の公判は12月5日に再開するとのことです。

　専門家は「フセイン元大統領に対する公判は既に実質的な段階に入った。情勢のさらなる悪化を防ぎ、12月15日に行われる国民議会選挙に向け安全な環境を作るために、アメリカとイラク当局はできるだけ早くフセイン元大統領に判決を下すことを希望している」としています。その一方、一部の専門家は「国民議会選挙のために、裁判は一時的に中断される可能性がある」と見ています。さらに、第2回公判を受け、イラク国内外はこの公判の合法性と公正さに疑問を持っています。検察側と弁護側双方は共に脅迫を受けており、双方の証人の出廷もますます難しくなり、仮に出廷したとしても証人は双方の質問に答える勇気がありません。フセイン元大統領の弁護団は資料を集める十分な条件と時間もありません。つまり、裁判は基本的な司法システムが保証されていないと言えます。