＜メインキャスト＞

　趙本山（zhaobenshan) 　　チャオ・ベンシャン

　人口が13億人もいる中国で、10年以上、人々を楽しませ続けているコメディアンです。

　今でも優秀なコメディ作品を世に送り続けており、「東方のチャーリー・チャップリン」と呼ばれるほど、中国の人々に愛されています。

　彼の芸域は「二人転」（中国東北地方で行われている民間芸能の一種）から始まり、小品、映画、そしてドラマと多岐に渡ります。

　彼の芸を見ていると、普段気づかない些細なことでも面白おかしいものに昇華できる、つまり日常生活は笑いの種の宝庫だ、ということを改めて認識させられます。

　2002年に趙本山が監督・主演した連続テレビドラマ『劉老根』は、中央テレビ１チャンネルのゴールデンタイム枠に放送され、全国各地で大きな反響を呼びました。

　従来、ドラマでも映画でもあまり人気のない「農村」というテーマを扱った本作品が、なぜ大きな成功を収めたか、その理由を探ってみましょう。

＜ストーリー＞ 

　『劉老根』は、農村で起業した男の物語です。東北・長白山に住んでいた初老の農民・劉老根は、大都会に住む長男の元で2年ほど生活してから故郷に戻ってきました。

　2年間の都会生活は彼の視野を広げさせるに充分なものでした。彼は「自分はまだまだ年じゃないぞ、何かをやってみたい！」と思い立ち、農村体験ができるリゾート地「龍泉山庄」を建設しようとします。

　しかし、その過程で、いろいろな困難や常識との衝突、更に感情の対立などに遭遇し、それまで自信満々だった劉老根も、しばしば反省させられてしまいます。

　そして、「龍泉山庄」がついにオープン。長男のお嫁さんがはじめてのお客を連れてくるなど、幸先の良いスタートを切ります。しかし、その後客足が途絶え、リゾートのオープンで盛り上がった村のお祭りムードも、たちまち冷え切ってしまうのです。

　その上、資金繰りさえも苦しくなっていき、まさに泣き面に蜂。さんざん悩んだ劉老根は、もともと単独出資の「龍泉山庄」を都会人のやり方に習って株式会社に変更しようと考えます。

　資金調達大会を開いて、予定通り、村人からお金を集めることに成功した劉老根。しかし、そこで、彼ははっと気付くのです。

　「村の人々は今回の資金調達を本当に理解しているわけじゃないんだ。昔、自分が村の書記を担当して苦労したことを知っているから、義理でお金を出しているだけなんだ」と??。 　

＜見どころ＞

　このドラマは、劉老根ら村人を通して、現在の農村の人々の考えや生活を、東北地方の独特な郷土情緒をを交えながら、うまく描き出した作品です。これも、ドラマ『劉老根』の大きな売りの一つといえるでしょう。ドラマの中で劉老根が結成した秧歌隊（秧歌とは、田植え歌などを起源とする民間舞踊の一種で、中国北方の農村で広く見られるものです）は、今では「東北地方の独特な郷土情緒」を代表するもののひとつとされています。

　ほかにも、東北地方の音楽や方言、そして俗語連発の会話など、いたるところに東北地方ならではのユーモアが盛込まれているのです。

　『劉老根』がに描かれている世界はあまりに田舎臭いと感じる人もいるようですが、その田舎臭さがまさに農民の純朴さと暖かさを感じさせてくれるのです。「純朴で素朴なもの」は、今の世の中、あまりに少なくなってしまいました。しかし、人々がそれを求めているのを見抜いたことが、このドラマが爆発的な成功を収めた理由の一つでしょう。

　さらに、忘れてはいけないのは、中国は9億人もの農民を抱えている国だとうことです。『劉老根』を通して、中国のこうした側面を実感することができるでしょう。「本物の中国」を知りたい！と思われる方は、ぜひ一度ご覧になることをお勧めします。