場所:北京市高碑店郷(電車:八通線・高碑店駅)
営業時間:朝9:30から夜9:00まで
【ベッキオの由来】
「ベッキオ」とはイタリア・フィレンツェにある街の名前なんです。ここは、芸術品で名高い街なんですが、それにあやかって、同じ名前をつけたわけです。何でも、このマーケットが世界的レベルにまで発展してほしいという願いから、この名前をつけたのだそうです。
【この場所を選んだ理由】
高碑店は昔から伝統工芸で有名なところです。また、市の中心部から離れてはいますが、郊外であるため土地の値段が安く、地元政府もいろいろとサポートしてくれています。さらに、市中心部だと、これだけ広大な敷地は手に入らなかったそうです。ここで出店している各テナントに対しても、たくさんの優遇政策を実施しています。
【マーケット全般】
とにかく広い!という印象です。敷地面積は1万6000平米ほどあるそうです。敷地の真ん中に500メートルほどのメインストリートが延びていて、左右に、多くのテナントが入った建物がずらりと並んでいます。マーケットは10のエリアに分かれていて、第1エリアでは彫刻製品、第2エリアでは民間手芸、第3エリアでは翡翠と白玉、第4エリアは陶磁器、第5エリアは刺繍、第6エリアは一般的なお土産もの、第7エリアはシルク、第8エリアは清華大学専用の作品展示ホール、第9エリアは天然宝石、そして最後の第10エリアはオークション用ホールとなっています。
【今後の目標】
ベッキオのブランドイメージを強く出すため、従来のような宣伝活動を行うほか、毎月違うテーマでイベントを開催することも計画しているという。商売やビジネスの場であると同時に、大御所たちの作品を展示するなど、中国の伝統手芸を大切にすることもその役割の一つです。それは、セールスポイントの一つともいえるでしょう。さらに、清華大学をはじめとする各大学の学生の作品を展示したり、オークションを行ったりして、よくある卸売り市場とは違う格調高いマーケット作りも目指しています。
店舗1 薛氏漆器
中国漆器の歴史は古くて、七千年前に始まったとされています。戦国から漢の時代にかけて最盛期を迎えていますが、特に漢の時代には、皇帝の日用品はほとんど漆器だったと言われているのです。「ベッキオ」にお店を出していたのは、山西省・平遥の漆器「推光漆器」を取り扱う「薛氏漆器」という専門店でした。店の名前は、山西省・平遥の推光漆器の大御所・薛生金さんの名前から命名しました。この店では、推光漆器の壁飾りや箪笥、小物入れなどを扱っています。「推光」というのは、漆器を作るときの手法の一つで、素手で漆をなじませるわけです。
漆を用いて描く絵画のことを「漆画」といいますが、漆を用いた芸術品として、中国やベトナムなどでは製作がさかんです。店内には、大小さまざまな「漆画」が置かれていましたが、漆の質感や色彩が非常に面白かったです。
店舗2 アヌー娘・ミャオ族民芸品ショップ
ミャオ族女性が経営するお店です。最初は、インターネットのショッピングサイトを使って自分のコレクションを販売していました。たまたま、住んでいる家の近くに「ベッキオ」というマーケットができると知り、出店することにしたそうです。店では、主に、ミャオ族のアクセサリーや衣類、インテリアなどを扱っているほか、チベットや南米、スペイン、メキシコなどの品も販売しています。最近、自分のアトリエを作ったという。来店のお客さんにもいい評判でした。
今回、「ベッキオ」に出店している翡翠専門店のひとつで、店長の王莉民さんに詳しいお話を伺いました。
店舗3 凝玉軒翡翠
中国では古代、めずらしい黄色の鳥と緑の鳥がいて、これらを翡鳥・翠鳥と呼んでいました。これらの鳥の色は鮮やかであまりにもきれいだったため、同じような色の宝石を翡翠と呼ぶようになったわけです。つまり、翡翠という名前は、鳥の名前が由来なのです。翡翠は緑色しかないと思っている方が多いかもしれませんが、実は黄色の翡翠もあります。中国では、翡翠は縁起のいいもので、君子(いわゆる気性や品格の高い人)のシンボルとも言われています。
この店はミャンマー産の翡翠の専門店で、みんなA級の翡翠です。店舗以外に、翡翠の加工工場も持っており、広州や上海にも店をオープンさせました。ここでは翡翠の飾り物、アクセサリーなどがそろっています。ミャンマー産の翡翠は硬玉の一種で、硬度が高く、玉の王様とも言われています。ガラスのようなツヤがありますし、色の種類もたくさんあります。緑や黄色、紫など、また、色の濃さもそれぞれ違います。中国では、翡翠の産出量はそれほど多くないため、古来から翡翠がよく取れるミャンマーから輸入し加工するというスタイルがとられてきました。今でも、中国はミャンマー翡翠の最大の市場だそうです。翡翠は決して安くはありませんが、中国では根強い人気があります。
店舗4 錦繍工房・蘇繍
中国には刺繍の4大産地があって、蘇州はそのうちのひとつに数えられています。 蘇州刺繍はとても複雑な手芸で、かなり時間がかかります。普通は一作品2週間から半年ぐらいかかりますが、3年以上もかかる作品もあるそうです。刺繍を始める前に、手本探しや糸の用意、色あわせなどいろいろな手順が必要なんです。特に、糸を染めることも、自分で工夫しなければなりません。難しいですけど、心が落ち着けるような芸術だということです。ここで扱っている作品は200点ほどで、かなり規模が大きいです。お土産用のハンカチやポーチなども販売していますが、主には額に入れて飾る観賞用の刺繍作品です。北京には、まだここ1店舗しかありませんが、今後は店舗拡大を目指しているほか、刺繍教室の開設も計画中だそうです。
実はこの店は、蘇州刺繍の大御所・鄒(しゅ)英姿さんが創設したものです。鄒さんの家は、蘇州刺繍の名門で、鄒さんも幼い頃から刺繍を学び、作品を制作して来ました。鄒さんの作品は、国内でも民間芸術賞を多く受賞しています。鄒さんの弟子やアシスタントの数は、合わせて100人以上となっています。今年、蘇州政府を代表して、日本の愛知万博で作品発表を行い、広く好評を博しました。今後は日本でも蘇州刺繍の展示スペースを開設する予定です。
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