中国は次第に高齢化社会に入ってきています。そして、お年寄りの老後の生活を誰がいかにして支えていくかは、人々がともに関心を寄せる問題になっています。
中国中部ある武漢市では、政府が資金を拠出してお年寄りにお手伝いさんを雇います。
<1 お手伝いさんと夏さん>「おばさん、今日何を食べるの」「キュウリとニンジンを食べようか。キュウリはお肌にいいし、ニンジンは栄養たっぷりですから…」
武漢市で一人暮らしをしている夏蓮英さんは今年86歳。家には中年の女性がいて、台所で料理をしながら、居間にいる夏さんとおしゃべりをしています。この場面を見たら、お嫁さんと姑さん、あるいは親子の日常生活だと思うでしょう。実はこの二人は家族ではありません。夏さんに料理を作るのは地元政府が派遣したお手伝いさんの陳慧さんです。
夏さんの家は部屋が一つしかなく、広さ20平米ぐらいです。部屋にはベッド、ソファ、たんす、テーブルがあります。家具は少ないですが、きれいに片付いています。
夏さんの話です。
<2 夏蓮英>
「お手伝いさんが片付けてくれたのですよ。もう年ですから、昔のように家事をすることはできません。でも、隣にいつも誰かがいて、よくおしゃべりをしてくれるっていうのはいいですね。」
13億の人口をもつ中国は世界で高齢化がもっともはやく進んでいる国でもあります。中国で60歳以上の人口は1億4400万人いて、アジアのお年より人口の半分を占めています。生活条件、医療技術の向上などに伴って、2020年までに、この数字は今よりさらに1億増える見込みです。これを受けて、中国政府は社会保障への資金投入を増やしています。そして、お年寄りにより快適に生活してもらうため、各地方政府も具体的な措置を講じています。武漢市の『お手伝いさん』派遣はその一つです。
この「政府がお金を出してお手伝いさんを雇う」というサービスは去年6月に始まりました。政府は毎年600万元を拠出して、女性のお手伝いさんを雇います。雇われるのは、主に国営企業などを、いわゆる『一時帰休』した人たちです。こうして、一人暮らしをしている高齢者2000人が毎日1時間のサービスを受けることができます。
夏さんはこのサービスを受けているお年寄りの一人です。夏さんの話を聞きましょう。
<3 夏蓮英>
「このお手伝いさんに来てもらえるって言うのは、本当にありがたいですねー。まるで神様がいいお嫁さんを与えてくれたようです。感動しました。政府のこの政策はなかなかいいですね。」
お手伝いさんの陳さんはほっかほっかの料理をテーブルに運んできました。熱いうちに食べて、と夏さんに勧めたあと、陳さんは部屋の掃除を始めました。陳さんは家事をやりながらこう話しました。
<4 陳慧>
「夏さんとは仲良くやっています。まるで本当のお母さんみたいに思うことがあるのですよ。一人暮らしのお年寄りは援助を必要とします。彼らをほっておくことができませんよ。ときには残業することもあるけど、大変だなんて思いません。」
政府の規定では、お手伝いさんは毎日、お年寄りに1時間のサービスを提供することになっています。料理を作ったり、洗濯したり、部屋の掃除をしたりします。しかし、時々残業しなければなりません。1時間だけではどうしても物足りないからです。お年よりのほとんどは体が弱いし、一人で出かけられません。ですから、お年寄りの代わりに、薬を買ったり、お年寄りに付き添って病院にいったり、体を洗うのを手伝ってあげたりします。
夏さんは「お手伝いさんの熱心な介護のおかげで、年寄りは、ずっと快適に過ごせるようになった。」といいます。夏さんは、お手伝いさんの陳さんが好きで、いつも玄関先で、陳さんが来るのを待っています。そして、いつもより、少し遅れると、不機嫌になるとか。その気持ちは、「娘の帰りを待つのと同じ気持ち」なのだそうです。
夏さんと同じサービスを受けているお年寄りがたくさんいます。困ったことがあったら、電話一本で、お手伝いさんがすぐ来てくれる・・・仮に自分の子供でも、できないことかもしれません。
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