北京市海淀区知春里の団地に入ると、すぐ脇の掲示板には、「環境保護のための情報」を紹介する文章があります。「省エネや"グリーン生活"は台所から始まります。炊飯器でご飯を炊くときは、ぬるま湯かお湯を使うと、電力を30%節約できます。湯沸かし器の温度設定は40度から60度が節電のために最も適当です。テレビ、パソコン、扇風機などは、使い終わったら、安全と節電のため、コンセントを抜きましょう。洗濯機を使う時は、決められた水の量に従います。少なすぎたり、多すぎたりすると、エネルギーの浪費につながります。全自動ならば、夏は簡単コースを選んで、水を3分の1節約しましょう」
一見、シンプルで常識のように聞こえますが、非常に大切で、言うは簡単、続けるのは難しいものばかり。これらは全て、一般市民の日常生活から集められた豆知識です。この団地の住民、李誠複さんの話です。
「団地内では、よく「グリーン」の家キャンペーンというイベントを開催します。不要になった紙を再生紙と交換したり、電池を回収したりなどといったキャンペーンを通して、市民に環境保護の知識を伝えているんです。あと、団地内の家庭から、環境に優しい生活を心がけている「グリーン家庭」を選出し、表彰するなどの活動もあります。」
李さん自身では今、月に1回だけは、車を使わない日を設けるよう努力しています。このことについて、李さんは「運転することは楽ですし、通勤には、実は車がなくてはならないです。でも省エネや環境保護のため、公共交通機関を利用したほうがいいということも事実です。だから、せめて一日だけでも、少しだけ無理をしてでも、自家用車に乗らない日を作っているんです。私のやっていることは小さな取り組みですが、一人一人がもしも同じことをやれば、大きな力となるでしょう。それぞれの家庭も、省エネ意識を高めて、日常生活の一部をちょっとした努力で変えていけば、団地全体の省エネは、相当なものになります。」
住民の鄭懐秀さんは今年70歳の女性です。団地全体で取り組むグリーンな生活の話題について、鄭さんは熱心に自分の経験を話してくれました。
「まず何と言っても、水の節約を心がけています。野菜や果物を洗った水を利用して、雑巾を洗ったり、トイレの掃除をしたりしています。あと、我が家で使っている電灯や洗濯機などの電化製品はすべて省エネ型ですよ。あと飲み物が入ってあったペットボトルや缶を集めて、専門のところに持っていきます。テレビや洗濯機などを使い終わったら、すぐコンセントから外します。これを始めた頃は、少し面倒でしたが、慣れればどうってことありませんよ。」
この団地では、マンション全ての部屋の冷房の配水管が一つのパイプにつながっています。夏には、冷房の時に排出される大量の水を集めて、芝生にやるそうです。
節約はそもそも中華民族の美徳です。5日開幕した全国人民代表大会年次会議の政府活動報告で、温家宝首相は「社会は省エネ、環境保護、良好な生産パターンと消費パターンを提唱すべきである。省エネと環境保護をすべての企業、地域、団地で習慣化して、省エネ型社会を作りあげる」と述べました。
こういった動きは、いまや北京全体に広がりつつあります。来年8月に開幕が迫った北京五輪のスローガンの一つが「グリーンオリンピック」であり、各地でこれにちなんだキャンペーンを行なうことが多くなっています。
今年の全国人民代表大会に出席している北京市の人民代表、王蓉蓉氏は自分が住む団地のことについて話しました。
「今、住んでいる団地の環境は毎年変わっています。住民の高い意識と良好な社会環境がないと、この一歩ずつの前向きな発展はありません。ですから、まずは小さいことから始めるべきです。ただ、一方で地域のインフラ施設や交通面での施設が、まだ不十分なのも事実です。中国社会が今後前進していくために、改善すべき点はまだまだ多くあります。」
「グリーンな生活」の一環として、市内の渋滞問題を改善するため、北京市では「ノーマイカーデー」運動も行なわれています。この活動に積極的に加わっている王さんは、「私も実はマイカー族の一人です。だいぶん前から車を運転しているんですが、今は車が本当に多くなりましたね。市内の渋滞もかなり深刻です。特に2008年オリンピックの期間中は、この渋滞問題を何らかの形で解決する必要があります。ノーマイカーデーはその取り組みの一つです。私自身も、この日は自動車利用を控えるよう努力しています。この取り組みは、少しずつですが、必ず効果が現れるものと信じています」と言いました。
省エネは家計にもやさしいものです。また、省エネは生活の知恵でもあり、私達だけでなく、子や孫、子孫に対する責任でもあります。「グリーンな生活」を提唱することの目的は、経済の発展と人口、資源、環境とのバランスを取って、持続可能な発展の考え方を普及させることです。地球は一つしかありませんから、資源はとても貴重なものです。人口が多く、資源が不足している中国では、省エネ型社会の構築に大切な意義があります。一人一人が省エネ意識を高めて、日常生活から、小さな努力を続ければ、きっと大きな成果が得られるでしょう。2008年、北京市のすべての団地が「グリーンな団地」になれればと思います。
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