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シンクロナイズスイミング・コーチ 井村雅代さん(下)

2012-08-25 19:39:11     cri    

中国の選手と私のロンドンへの道

シンクロナイズド・スイミング指導者 井村雅代

























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 デュエット競技の予選では二位だった中国代表は、決勝では惜しくも0.03の僅差でスペインに押さえられ、銅メダルに留まりました。
 この結果を見て、試合に出場しなかった7人の選手、全員が泣いてしまいました。それを見た井村コーチは驚きました。

■チームの演技、ロシアをも振り向かせた

――デュエットの銅は惜しかったですが、チーム競技がその後に迫っています。北京五輪のチーム種目では、中国代表は銅メダルを獲得しました。今回はそれ以上の目標を目指すと井村コーチは意気込んでいました。

 デュエットの結果に泣いていた選手に、声をかけなければいけないと思って、私は一人一人に、水泳連盟の李会長に言われた通りの言葉を言ったのです。「中国シンクロの新しい歴史をデュエットの二人が作ったんだよ。だから、あなたたちも作ろうよ」っと。そして、「作るということは金か銀かしかないから、分かってるね」とそこまで言いました。みんな「分かった」と言ってくれました。

――デュエットの銅は結果的に、そのあとチームの原動力になったようですね。

 あれで団結しましたね。それ以降の練習はびっくりするぐらいに練習が減っているのに、何でこんなに上手なんだというぐらいに、びっくりするぐらいに素晴らしい演技をしました。
 ちょっと気持ち良かったことを一つ言いますと、中国チームの練習が始まったら、ロシアが見に来てくれて、最後ロシアのコーチは、ビデオで撮り出したのです。ロシアの選手は別世界ぐらいに上手ですが、逆に偉いなあと思いました。あれだけ世界に君臨している国でありながら、中国選手の技術のすばらしさを認めて、中国に学ぼうとしています。
 それで勝たせてもらったら、もっと気持ちがよかったんですけど。勝たなかったのが悔しいけど、ロシアの謙虚さは今までのどこの試合でも見られなかった光景でした。

――「井村中国」はこれから怖いチームになるということをロシアは感じていたんでしょうね

 「中国のスポーツのシステムと中国選手の素材的な素晴らしさ、それに私が行ったら怖い」ということは、彼女たちが言っているというのを前から聞いていましたけど。今回は、技術的には中国はロシアに全然負けていなかったです。

■絶対にやってくれる!

――チームの決勝戦では中国代表の演技が一番最後でした。どのような気持ちで選手たちの出場を見守っていましたか。

 絶対、彼女たちは私の目指した演技をしてくれると信じていました。不安というのは全然なかったです。百パーセント信じていました。でも、人間ですから、わっと興奮したら何が起こるか分かりません。最後フリールーティンの決勝の時、プールの底についたら減点なんですね。どんな良い演技をしても、減点されたらそれで終わりです。だから、底についたらだめよ、と。それは言いました。
 でも「どきどき」とかじゃなくて、信じていました。やってくれるって。それは彼女たちにも伝わっていたと思います。

――北京オリンピックの時、選手たちはかなり緊張していたようですが、今回、選手たちのコンディションはいかがでしたか。

 泳ぐ寸前のことについて、試合が終わってから聞いてみたら、「オリンピックで泳ぐのはもっと緊張するもんだと思っていましたが、緊張しなかった」と言っていました。
 その言葉を聞いた時、これまで私がずっと考えていたプロセスが私の思った通りはまったなと思いました。
 選手はみんな試合の時に頑張りますよね。でも、違う方法で頑張る選手が2~3人おりまして、だから自分だけ勝手に頑張っていきそうな子を掴まえて、「あなたは曲を聞いて一緒に数えるんだよ」、とちゃんと声を掛けました。
 最後に皆に言ったのは、「ともかく力を出しなさい。パワーが大事です」、と。ただ、リフトが勝手に頑張るとぐちゃぐちゃになるので、それを思い出して、瞬間的に「ただし、リフト以外!リフトはちゃんと皆のタイミングを大事にするんだよ」と言った記憶はあります。

■選手にこそ謝謝!

――中国代表がオリンピックでシンクロの初の銀メダルを獲得した後、井村コーチの頬に選手がキスしました。
 あの辺のことはもう興奮して、分かりませんでした。誰か「谢谢」と言ってくれて、キスしてくれて、それが暁君だと後で聞きました(笑)。
 本当に嬉しい。「やってくれた!」という感じです。でも良く考えたら、やっぱりまだ上がいるのに、と思いましたけど。選手たちは全員揃って私に「先生、ありがとう」と言ってくれましたが、私からは「先生こそ、一人ずつにありがとう」と言いました。

――それは選手たちが心を一つにして頑張り、ゴールできたことへの感謝ですか。

 というよりも、私とめぐり合うまでの彼女たちを取り巻く環境と私がスポーツコーチとしてやってきたバックグランドとは、まったく違うわけですが、「よくぞここまで私を信じてついてきてくれたな」という意味で、本当に彼女たちには「谢谢」しかありませんでした。
 きっと私のことを理解しにくかったところも、つらかったことも一杯あったと思います。でも結論はいつも「先生、これからも教えてください。私たちを見捨てないください」と彼女たちは泣きながら私の部屋へ謝りに来ました。やっぱりそこは折れないと。そして「一緒に頑張ろう」、と。
 プールサイドに立つ私は頑固で強い。価値観が違う私が言い切るわけですよ。そこについてくる彼女たちも大変だったと思います。そういうのを含めて、私を最後まで信頼してくれたことに対する「ありがとう」、「難しかっただろうけれども、よくぞ最後までついてきてくれた」という気持ちで「ありがとう」です。

――ロンドンまで日本から応援団が駆けつけたようですね。応援団の皆さんにも良い演技を見ていただけて、気分爽快ですよね。

 私の友人や兄も、日本から中国チームの応援に来ました。やっぱり、あれだけつらい練習を越えてきた選手たちに遣り残しがあってはいけないので。それがなかった。あの時、彼女たちが持っている力は全部出せたと思います。それはコーチとして、何よりも嬉しいことで、そして、彼女たちを引っ張って来てよかったと思えることでもあります。だけど、二番だったことは、ロシアは私たちよりもっと厳しい練習をして、もっと強かったということを、私たち中国が認めることだと思います。それがスポーツです。 

■中国と日本はともに学び、共に競い合おう

――アジアのシンクロを見る時、強くなってきた中国もいれば、今回のオリンピックでメダルが取れなかった日本もいます。もうすぐ帰国される井村コーチにとって、やはり日本国内からのプレッシャーも覚悟していらっしゃるのですか。

 真実が分かる人は分かってくれますし、真実を知ろうとする人には真実を言いますし。でも、2008年の時とは違って、今回は多分日本の中でも私に対する色んな風当たりの方向はものすごく変わってきたと思います。やはりこれだけインターネットなどを通じて情報が自由に得られる時代になったので。
 日本の中にも、日本のチームを応援するけれども、中国チームも応援するという方はたくさんいることを私は知っています。だから、ともに学んで、ともに競い合うということが大事だと思います。
 私はチームの表彰式の時の国旗を見ながら、一瞬、これはどこかで見たことがある並びだとふっと気が付きました。そうだ、2004年のアテネ五輪も同じ並びで、中国の代わりに日本があっただけなんだ。それを思い出したので、たまたま私の隣にいたあるコーチにそれを言ったら、そのコーチが私に「でもね、三つの国のコーチは今も同じ人がやっているよ」と言ったんですね。
 それは、私にしてみたら、日本と中国が入れ変わっただけは、悲しいことで何故あの三つの中に少なくともアジアの国が二つないんや?なんでいつまでもロシアがあそこにいるんや。気に入らないけれども。ちょっと残念なことでした。

――日本のシンクロにとって、今回は初めてのメダル無しの大会となりました。心中ずいぶんつらい思いもありましたか。

 申し訳ないですけど、まったくないです。何故ならば、戦っている時に、そんな余裕ないんですよね。ともかく自分の見ている選手に最高の演技をさせてやろう、輝かせてやろう。もうそれしかないんです。ですから、日本の演技もはっきり言って見ていません。見る時間もなかったし、見ようということも考えません。中国の選手、私の選手がどうしたら良い成績を取れるのかということしか考えていません。
 でも結果的に、日本代表にまったくメダルがなかったことは、それは非常に残念なことです。何故ならば、やっぱり中国と日本が切磋琢磨して両方とも強くなっていってほしいというのが、私の願いだから。結果を聞いて、私はそう思いました。

■「オール中国」はフェアを貫くことから

――(会場から)団体競技が強くない中国のチームをまとめることができた一番の要因は?

 中国人であれ、日本人であれ、我々は人間です。人間ですから、みな分かるんです。そのために、私は一人一人の選手を平等に扱いました。時々考えるのは、どんなに上手な選手も下手な選手も、全員上手になりたいんだって。全員が自分も大切にされていて、数に入れてほしい。人間が一番つらいのは無視されて、数に入れてもらえないことです。
 だから、上手にしてあげることが大事。全員上手にしようと思っています。そうすると、おのずから私のプールサイドに立つ時間が長くなります。  

シンクロの始めは競泳から始めるんですけど、私が来るまでに、全員のポジションが決まっていました。私が来て、速い人を真ん中にして、順番にざっと並べたわけです。そして、いくら有名人でも下手なものは下手で、下手なグループの練習でやらせました。まず中国のコーチや選手はそれに驚きました。やっぱり上手な人が強いと認めるのは当たり前のことと思います。その当たり前のことが人間社会ではできにくい。それを私はやりきりました。
 中国にもスポーツにまつわる背景はあると思いますけれども、悪い事は悪いとちゃんと言うこと。相手が偉いか偉くないか、若いか若くないかは関係なく、それをはっきり言い続けることです。そこで信用を得ていくと思います。最初に言われて、そこでへこんだらだめ。やはりいつまでも公平で、いつまでも正しいことは正しい、間違ったことは間違いだと言える強い意志を持つこと。
 外から見て私は日本人だと思われているかもしれません。しかし、これが私なんだ。私はこれ以上の私はいないんだから。私を認めるか、私を認めないのなら、この国から出て行きますぐらいの腹をくくってやる。その心がなかったらだめです。
 きっと、中国の選手にしてみれば、それをやる私はびっくりするような特殊な人物だったと思います。でも、それが必要であることは、今の中国の人たちはみな知っている。ある部分、それが中国に欠けていることを皆、知っている。

■中国とのつながり、永久に消えることはない

――インターネットからもたくさん質問が上がっています。一番多く聞かれたことは、井村コーチはいつかまた中国代表を指導しに来てくれないか、また日本に戻った後も、中国とつながりを保ち続けていくのか、です。

 今後はどうするか、自分も不思議なぐらいに真っ白です。これが私の人生の歩み方です。次のことを考えて、これが終わって一ヶ月休憩したら決めるということはしない。
 考えてみたら、2008年の北京からロンドンまで、中国のチームを率いていなかったのは、2009年だけなんですね。それ以外の全部の国際試合を私は彼女たちと戦ってきました。ロンドンオリンピックが終わって、いま思うことは、きっと中国のコーチもたくさん私から学んだだろう、学んでくれてほしい。中国のコーチがいつまでも耐えるのじゃなくて、今度は私がサポートする側で、中国のコーチをサポートしてやりたいとは思います。
 私が一番希望するのは、中国と日本を始め、まずアジアが強くなることが非常に大切だと思うんですね。そのためには、中国も強くなってほしい。で、私がいなくなって、きっと「先生の教えは非常に重要であった」と、いなくなったら気づくこともあると思います。そういう意味で、今度は中国のコーチたちにお願いしたいことは、学んだことを発揮すること。
 もう一度自分が前に出て、第一線の立場を奮って、ヘッドコーチとしてずっとやり続けることは本当に良いのかというのをやっぱり考えています。
 私は実を言うと、北京オリンピックが終わった時、ロンドンオリンピックで中国のヘッドコーチをやるとは考えていませんでした。ですから、まったくどうなるのか分かりませんが、中国のシンクロと中国のスポーツ界と、中国の人たちと私のつながりはこれからも永久に消えることはないんです。それだけは確かです。

――シンクロ中国代表のキャプテン・劉欧さんから井村コーチへのメッセージをお預かりしています。ご紹介しましょう。
 "帮我谢谢教练,请她不要为离别难过,我们一定会再见面,欢迎来广州游玩,我爱她。"(井村先生にお礼をお伝えください。別れを悲しまないように。必ずまた再会します。ぜひ広州へ遊びに来てください。井村コーチのことを愛しています)
 
選手から愛されているコーチって、最高に幸せなことですよね。

 ありがたいと思います。17日の解団式の後に、バスを降りた劉欧が私の手を握り、「先生、メールを送るからね」と言ってくれました。私は手紙で「さようならを言わない」と言ったのですから、この子は思うことがたくさんあったのだなと分かりました。
 中国にも私の教え子がたくさんいることをほんとに誇りに思います(涙)。

――最後に、ロンドンで全然泣かなかった井村コーチは今日はたいへん涙もろいようですね。

 私、勝負が終わったらこんなもんです。涙もろいんです。勝負の時、やはり違うことを考えているので、そういう隙がない。でもやっぱり終わったら、頭も終わっていますし、エネルギーも終わっていますし、全部柔軟になっているのです。彼女たち一人一人のことを思うと、中国にも日本にもよその国にも自分の大切な教え子がいるということは、なかなかないことなので、私って、すごく幸せなコーチだなあと思います。ありがとうございます。


(聞き手・構成:王小燕 写真:趙海成、胡徳勝 録音:李軼豪)

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