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中国話劇の殿堂・北京人民芸術劇院!

2010-05-17 10:55:20     cri    

 4月の末、細かい雨が降りしきる中、久々に首都劇場に足を運んだ。某学院に在籍中は毎月2回通っていたこともある。学生には格安に席が用意され、北京のほかの劇場に比べて割と安価で芝居を楽しむことができるからだ。おまけに芝居はどれも骨太で、役者は中国最高峰といわれている方たちばかり。どんな端役の役者達からも、たしかな演技と誇りを感じることができる。北京人民芸術劇院(北京人芸)の役者として舞台に立つことは本当に難しいことなのだ。そんな伝統と格式にあふれた北京人芸の舞台ファンも健在で、北京訛りのセリフを聞きに、毎月のようにやってくる観客もいるらしい。

 北京人芸の本拠地・首都劇場は王府井の繁華街を少し離れた場所にある。1952年創立、初代院長は劇作家の曹禺。彼の戯曲「雷雨」は近年日本でも公演され、私の友人などは東京で観劇して、いたく感動していた。中国でいう話劇とは日本でいうところの新劇にちかく、何か大きな装置や斬新な掛けでみせるわけではなく、綿密な舞台設定と人物描写でドラマを織りなすセリフ劇である。時代の変化と観客の嗜好を考えると、3時間の上演時間は決して短くない。しかし、人芸はかたくなに、先人達が築いてきた作品を人芸の財産として上演し続けてきた。先にあげた曹禺の「雷雨」「日の出」「北京人」「原野」、老舎の「茶館」「駱駝の祥子」、郭沫若の「蔡文姫」など。これらの作品が人芸の風格を形成してきたといっても過言ではない。

 今回私が観劇したのは「駱駝の祥子」(ラクダのシアンツ)。言わずと知れた老舎の名作である。(演出は顧威)  簡単にストーリーを紹介すると旧時代 (1920年代)、軍閥が割拠する混沌とした北京を舞台に、人力車夫のシアンツの奮闘ぶりを描いている。 しかし彼は、兵隊の騒ぎに巻き込まれて人力車を壊されたり、学生運動のあおりで捜査に来た探偵に有り金すべてを巻き上げられたり、とにかく、幸せになりかけると、何者かに打ち砕かれてしまう。シアンツだけではなく、 登場人物たちはいずれも貧しかったり、お金持ちでも薄情だったりと、それぞれが悲惨で不幸な暮らしにあえいでいる。「駱駝の祥子」 は旧社会の民衆の持っていき場のない怒りや絶望を描いた悲劇である。しかし今回観劇して感じたのは、悲劇で終わっていないという点である。なにかそれをつきぬけた、かすかな希望の光を感じられる、感じたいと思わせるなにかが役者の内側から発せられていたような気がする。そして、北京の城壁に寄りそうように建てられたレンガ造りの陋屋や、夜の闇に降りしきる雪、かまどから湯気の立つ暖かそうな室内、リアルで芸術的な舞台セットも美しかった。

 人芸は5月、日本の劇団四季・浅利慶太氏とタッグを組んで「ハムレット」を上演する。5月の末からは名作「龍須沟」を上演。

 ぜひ、人芸の挑戦と伝統を体感しに首都劇場に足を運んでほしい!(取材・撮影:畠沢優子)

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