「なんじゃ。これは?ここへらん巴を呼べ」
武帝が怒ったので側近が慌ててらん巴をよんだ。何事だとらん巴がいそいそとくると、武帝は持ち帰った酒のことを詳しく聞いた。そこでらん巴がありのままのことを言う。これに武帝は「その方、さがってよいぞ」とらん巴を帰らしたあと考え込み、何かに気付いたのか東方朔をよんだ!
さあ、大変、当の東方朔はことがばれたことに気づき、びくびくしながら宮殿に向かっていたが途中でいい考えが浮かんだのか、気を取り直した顔をして武帝の前に出た。
「東方朔、おのれ!朕の不死酒をどこにやった!」
この武帝の剣幕に東方朔は慌てもせずに答えた。
「申し上げます。実はあの不死酒は私めが飲んでしまいました」
「たわけ!なんと無礼なやつ!打ち首にしてくれる!」
これに東方朔はぎょっとしたものの、すぐに笑顔で答えた。
「これはこれは申し訳ござりません。皇帝さまの御酒を盗み飲んだ罪は重うございます。私めはどんな罰でも受けましょう。しかし、打ち首にされたのでは、私めが飲んだ酒が困ると思いまするが」
「なに?打ち首にすると酒が困るとな?」
「はい、あの酒は飲めば死なないというもの。ですから、私めを殺すことは出来ませぬ。もし私めが本当に死にましたら、あの酒は不死酒ではないことになります。皇帝さま、この世に飲めば死なない酒というものがありましょうか?」
「なんと・・・」
これに武帝は答えに困ってしまった。そしていつも自分の話し相手になっては笑わしてくれる東方朔を見て、急に笑い出した!
「はっはっはは!東方朔よ。その方は相変わらず口がうまいのう!仕方あるまい。このことはなかったことにいたす。じゃが今度からは幾ら酒が好きだとはいえ、朕の酒を盗みのみしてはならん!愚か者めが!」
ということになり、東方朔はゆるされたというわい。
ではここで酒にまつわる昔の笑い話です。
明代の人、趙南星が書いた本「笑賛」から「雨と酒」 。
「雨と酒」
朱さんはかなりの酒好きで、下男を連れて友人の家でご馳走になって帰途に着いたが、なんだかまだ飲み足りない。そこで、途中の酒屋に入り、ゆるりと飲み始めた。
こちら下男、速いこと屋敷に帰らなくては、奥様にまた叱られると思い、時を見計らって外に出てみると、黒雲が出てきていまにも雨が降る空模様になったので、慌てて主人に、「旦那さま、もうすぐ雨が降りまするよ。早くお帰りにならないと、びしょ濡れになりまする。どうか、お腰をお上げくださいまし」
これには主人、「なに?雨が降るとな?雨が振れば帰れないではないか。まあ、そこでおとなしく座っとれ」と飲み続ける。
しばらくして本当に雨が降り出した。 「ほれ見ろ!お前の言うこと聞いていれば、今頃はびしょ濡れじゃ!ふん!」
次は清の「笑倒」という本から「肴をまつ」です。
「肴をまつ」
親父と息子が天秤棒で酒樽かついで帰途についていた。
「息子や、この酒は値が幾らか張ったが、うまいのじゃぞ!家に帰ったら、母さんにうまい肴を作ってもらい、たっぷり飲もうな」
「そうだね。とうちゃん。この酒はこれまでのより香りがいいし、きっと気持ちよく酔えるよ」
「あたりまえだ!それが目的で、こんな遠くまでお前と二人で買いに来たんだものな。晩酌が楽しみだ」
「そういうこと、そういうこと」 と親子二人がホクホク顔でいると、どうしたことが石畳の道まで来て、二人は足元をすべらせた。お陰で担いでいた酒樽を落としていまし、ガシャーンという音がして割れてしまった。
そこで息子は慌てて地べたにしゃがみこみ、くぼみに溜まった酒をズースーと吸い飲みし始めた。
が、こちら親父のほうはせっかくの酒樽を壊し、うまい酒が台無しになったのでカンカン。「こら!お前は何をしとるんじゃ!!」
これを見た息子は、相変わらず地面にしゃがみこんで酒を吸い飲みししならがこう答えた。 「とうちゃん、早く飲みなよ。もったいないよ。それとも酒の肴待ってるのかい?」 やれやれ!
そろそろ時間です。では来週からの「中国昔話」の再放送も是非お聞きくださいね。
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