「義姉さん、いるかい?魚もって来たよ」
この声を聞いて孟金貴はびっくり。そう、かの族長の孟大がたずねてきたのだ。孟大は家に入り孟金貴がいるのに気づき、いくらか驚いた。
「おう!金貴じゃないか。いつ戻ってきたんだ?」と孟大は魚を置くと孟金貴に声をかけた。
「どうだい?わしのことまだ憎んでいるのか?」
孟金貴はそれまで仕返しの相手が、急に恩人になったので、どう答えていいのかわからない。孟大はいう。
「いいか、金貴。お前が罪を犯して山の洞穴に逃げ込んだとき、わしはお前がまた馬鹿なことをするのを恐れ、役人を連れてお前に縄をかけさせたんだ。知ってのるか?お前と一緒に逃げた二人の男は他のところで盗みを働き捕まってしまい、挙句は処刑されたよ。おかげでその家族もつらい目に遭ってな。気の毒なもんだ。それにお前、捕まらずに逃げてばかりいては生きてはいけないだろう。それより、早くお縄にかかって刑に服し、生まれ変わって生きたほうがいいだろう?なあ、義姉さんよ」
これに孟金貴の母は涙流してうなずき、「そうだよ、息子や」と孟金貴にいう。こちら孟金貴はただうなだれいるだけ。そこで母はかの四百文のことを思い出し、「族長さんよ。あの見舞金の四百文はなんだい?」と聞く。これに孟大は頭をかきいう。
「あれか!実はあれはお前の居所を教え、そこへ案内したあとの褒美だ」
「ええ?あれはお前さまへの褒美かえ」
「ああ。わしは褒美をもらっても少しもうれしくはないし、その金はいっそのこと、金貴、お前の母さんに渡したほうがいいと思ってな。お前が戻るまで、母さんが困らないようにするためだよ。金貴、わしはお前とお前の母さんことを思ってやったんだ。まだわしを憎んだいるのか?」
ここまで聞いた孟金貴は、不意に涙が出てきて震えながら跪き、思い切って言い出した。
「おじさん。すまない。おじさんが俺と母さんのためを思ってそんなにまでしてくれたとは思わなかったよ。今、やっとわかったばかりだ。これまでおじさんを目の仇にしていたことを許してくれ。すまない」
これに孟大はほっとして笑い出し「いいからいいから。わかってくれればいいんだよ。さ。跪いていないで立ちなさい」という。そこで孟金貴は立ったが、孟大は何かに思いつき、聞く。
「うん?金貴よ。お前の刑期は三年だぞ。どうして早く帰れた?」
「それは・・それは・・」とこれに孟金貴がためらい、母も驚いた顔をした。
これに孟大は考えていたが、やがて言い出す。
「わかった。金貴よ。お前せっかく戻ったのだろうが、それじゃあ罪は重くなるばかりだぞ」
「じゃあ。俺はどうすればいいのかな?」
これに母はあわてて孟大に頼む。
「族長さん、何とかしてくださいよ」
孟大は金貴を厳しい目でみてからいう。
「いいか。お前が逃げてきたことを役所が知れば、お前の罪は重くなる。それより、これからすぐ役所に自首しなさい。わしも何とか言うから。そうすれば、これから半年あまりで、何とか母さんの元に戻れるだろうよ。悪いようにしないよ。さ、これからすぐ行こう」
これに孟金貴はしばらく考えてから不意に顔を上げ、孟大にうなずいた。
こうして孟金貴は孟大に付いて役所にいき、自分は一人ぼっちの母が心配で仕方なく逃げてきたといった。
| ||||
© China Radio International.CRI. All Rights Reserved. 16A Shijingshan Road, Beijing, China. 100040 |