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世界不況下の温州、民間金融の実態に迫る

2011-10-26 14:03:10     cri    

 36万社の民間企業がある浙江省温州市。その多くは輸出依存型の中小企業であるため、欧米の債務金融危機の余波を受け、最近、「跑路潮」と呼ばれる経営者の夜逃げ事件が相次いでいます。

 温州中小企業発展促進会によりますと、今年に入ってからすでに90人に達しており、20%の企業が操業停止もしくは停止寸前の状態になっています。

 ところで、中小企業の栄枯盛衰に深くかかわっているものに、「民間金融」があります。CRIの記者が先日、温州に入り、民間金融の現状をリサーチしてきました。

 ■浸透した民間金融

 温州では9割の市民が民間金融にかかわっているとも言われています。数字はともかく、個人や家庭を単位としたお金の貸し借りが盛んに行われているのは間違いありません。

 20年前に、大学を卒業してから、仕事の合間に、個人で融資業務を始めた温州っ子・王登嫻さんの話です。

 「温州では、巨大な資金ニーズがあります。お金を家の中、あるいはポケットにしまいこんだままにしたり、銀行に貯金したりするだけでは、価値が下がるばかりです。そういうわけで、使わないお金があれば、誰かに貸すようにしている人が多いんですね」 

 王さんは大学を卒業した後、2万元(日本円約24万円)を元手に友人や知人向けの融資を始めました。

 「1990年代初め、私は大学を卒業した時に、貯金が2万元ありました。当時の銀行預金は年利10.8%だったのに対して、民間の貸付だと20%の利回りがありました。それで、私は兄や姉たちに頼んで、その2万元を貸し出し、年間、4800元の利子を得ました。そうしているうちに、給料もたまり、利回りも大きくなってきたので、手元の資金を投資に使うほか、民間金融にも使うようにしました」

 今、王さんの資金はすでに1000万元に達しました。融資の対象は主として、知人や親戚です。貸付金利は平均して18%ですので、ざっくり計算しても、年間の利益は180万元(日本円2100万円ほど)になります。

 

 ■中小企業の繁盛の支え

 中国では、中小企業向けの公式融資ルートが限られているため、融通の利く非公式融資のルートが中小企業の発展を大きく促した一面もあります。

 温州中小企業発展促進会の周德文会長の話です。

 「改革開放の初期から、温州では家内工場のような民間企業がたくさん現われ、その当時から民間金融が活躍していました。国の金融体制が完備しておらず、資金の借り入れのニーズが大きかったこともあり、民間金融が必要でした。もし、民間金融がなかったら、いまの温州経済の繁栄ぶりもなかったように思います」

 統計によりますと、温州の民間資本は6000億元(日本円では7兆2000億円)を超えており、しかも、年間14%のスピードで伸び続けています。このうち、民間金融にかかわっている資本は1100億元に達しています。これらの民間貸し付け資金の源は、主として、民営企業の経営者および一般家庭の余剰資金です。親戚や知人同士の貸し借り、抵当会社、質屋、代理販売業者など様々な形で民間の融資市場に流入しました。

 ■諸刃の剣でもある

 ところで、一見儲かってばかりのように見える民間金融ですが、実は危機も潜んでいました。

 温州中小企業発展促進会・周徳文会長の話です。

 「いうまでもないことですが、民間金融は諸刃の剣です。利息に関して、正規の金融機関よりずっと高いため、中小企業の融資コストを高くしました。

 それに、当局のチェックの目もないため、利息を突然上げられたりして、企業の経営に大きなプレッシャーをもたらしています。こういうことが長く続いたため、資金チェーンの破綻、企業の倒産を招き、一部の経営者の夜逃げという事態が起きてしまいました」

 民間金融の浸透は、これまで温州の経済成長に巨大な利益をもたらしました。しかし、債務危機の影響が蔓延している今年、これまでのモデルの維持に困難を感じる人が増えています。王さんの話です。

 「確かにパニックを感じています。何よりも、資金の安全性が第一です。友人の中には、数百万元を企業に貸して、良いリターンを得ていましたが、今は、リスクを考え、資金を回収するようにしています。同僚の中にも、民間金融から手を引く人も出ていますし、私も少しずつお金を回収するようにしています。」

 個人貸し出しのみならず、抵当会社に代表される融資機関もクローズアップされています。国内のその他の金融業が発達している都市に比べて、温州の抵当会社の規模は大きくありませんが、数は全国一です。しかし、最近、一部の企業の資金繰りが破綻し、経営者が夜逃げしたのに対して、今後の経営環境の悪化に懸念を示す人も多くいます。

 しかし、今回の危機は、今後のいっそう規範化した発展につながると見ている意見もあります。温州市億兆小口融資会社の責任者の話です。

 「厳しいことは厳しいです。ただ、まだ最悪ということにはなっていません。私たちとしては、引き続き今の企業規模を維持したいんです。今はたいへん肝心な時期で、合法的経営をなんとしても確保していきたいです。こういう時期だからこそ、私たちの小口融資会社の経営理念、上部機構の要求をきっちり貫徹させていきます。チャンスをしっかりつかみ、危機を適切に処理していきたい。ある意味、今は、千載一一遇のチャンスでもあります。」

 ■金融改革の突破口になるのか

 民間金融は、過渡期にある中国経済にとって、無視できない資金提供の手段となっていました。温州を例にとれば、膨大な民間資本が投資先を欠く一方、数多くの中小企業が融資難にぶつかっています。こうした中、民間金融が資金の需要と供給の橋渡しの役割を果たすようになりました。

 しかし、民間資本は経済成長にプラスになる一面もあれば、金融秩序に害を与える一面もあります。リスクを回避し、モニタリングと管理を強め、民間金融に一定の法的地位を与えた上、通常の金融監督管理に組み入れるようにすることこそ、問題解決のポイントだと見られています。

 これに関して、温州経済学会の馬津龍会長の分析です。

 「供給と需要に矛盾があります。出口を待つ大量の資金がある一方、大量の借り入れ需要もあります。この両者をどう結びつけていけば良いのか、より良い制度設計に期待しています。

 今、正規の制度でこの両者が繋げられないことが問題なのです。民間金融の盛んな温州は、このような制度改革の実験場になり、良い成果を得られるよう期待しています」(Yan)

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