舛添氏の前回の北京訪問は1年前の2013年4月になります。当時は、日本の参議院議員で、「新党改革」代表としての訪問で、清華大学当代国際関係研究院で「中日関係:課題と展望」と題した講演会が行われました。
前回に比べ、舛添氏の今回の北京訪問は、18年間も途絶えていた東京都と北京市とのトップ交流に、新しい歴史を吹き込むという点で注目されています。
【18年ぶりの訪問 実現までの道筋】
在日本中国大使館の程永華大使が今年3月28日、東京都を表敬訪問した際、舛添知事は「環境保全などの問題で、北京と東京との友好関係を推し進めていきたい」と表明し、「いつか北京を訪問したい」との意向を伝えました。
その後1か月も経たない4月15日、北京からの招待状が舛添知事に届きました。それを受けて、舛添知事は同日午後、緊急記者会見を開き、4月24日~26日の北京訪問を正式に発表しました。「大気汚染対策や医療改革、社会保障制度などにおける協力について、北京と話し合っていきたい」と表明しました。
今回の訪問の意義について、舛添知事は「355組もある中日の姉妹都市関係において、東京と北京は両国の首都として、交流することが大変必要だ。今回をきっかけに、今後はもっと多くの都市が交流を展開していくよう期待する」と話しています。
さらに、「もっとも大事なことは、双方が相手のことを正確に知ることだ。日本の国民は、中国と友好的に付き合いたいし、中国の国民も同じだと思う。しかし、残念ながら、こうした思いが正確に両国の国民に伝わっていない。こうした状況で、北京市政府から訪問の招請を受けたことに対して、感謝の気持ちでいっぱいだ」と語りました。
舛添知事の北京訪問をめぐり、中国外務省の華春莹報道官、秦剛報道官は相次いで、「民間と地方交流を支持し、両国関係の改善と発展につなげてほしい」と前向きな評価をしています。
【分析筋:中日関係、改善の要は安倍政権の歴史認識にある】
中国では、舛添氏は「バランス感覚と国際観のある人」として評価されています。両国関係が行き詰りに陥っている中、こうした評価が北京市は舛添氏をいち早く訪問に招請した理由の一つだとされています。
清華大学当代国際関係研究院の劉江永副院長によりますと、舛添氏は一年前に同研究院で行った講演会で、日本の歴史教育の物足りなさに関する反省にも触れていました。劉副院長は「国際関係の研究をしていた経歴もあり、全般的には、中国に親近感があり、バランス感覚と大局的な国際観のある方」と評しています。
舛添知事の北京訪問が両国関係の改善にとって、一つのきっかけになれるのか。中日双方から高く注目されている点だと言えます。これについて、舛添知事もはっきりと自覚する姿勢を見せていました。
舛添知事は北京で、「安倍首相は私の北京訪問を嬉しく思っている。北京市民としっかり交流を行ってきてほしいと言われていた」と、首相からの関係改善の意思があることを伝えた上、「今回は自分の努力により、訪問を通して中日関係の改善に重要な一歩を踏み出したい」との意気込みを見せていました。
しかし、舛添知事本人への評価はさておき、分析筋は中日関係の改善の要は引き続き、安倍政権の歴史認識と、その中国に対する見方にあるとみています。
中日友好協会会長の唐家せん元国務委員や、国務院の汪洋副首相は、舛添知事との会談の中で、いずれも安倍首相の靖国神社参拝への不満を伝えていたということです。中でも、汪洋副首相は26日、中南海での舛添知事との会談で、「歴史を鏡とし、未来に目を向ける」精神に則って、中日関係を前進させることを強調しました。とりわけ、「中国はいかなる挑発に対しても、しっかり対応し、第二次世界大戦で勝利を得た成果と戦後の国際秩序を守っていく能力がある。日本側には歴史などの敏感な問題を妥当に処理してほしい」と安倍首相をけん制するメッセージも出していました。こうした中国の要人らからのメッセージは、日本のメディアから、北京から託された「重い土産」と評されています。
帰国後の舛添知事は28日に安倍首相を訪ね、中国訪問について報告し、中国側の不満を伝えました。安倍首相はそれを踏まえた上、今年秋に北京で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に向け、日中首脳会談の実現など関係改善を目指す考えを示したとも報じられています。
舛添知事のメッセンジャーとしての役割は十分に果たせたと言えますが、今後の中国関係の行方は、北京から託された「重い土産」に対し、安倍政権がどのように受け取り、対応するかにかかっているとみられています。(Yan、山下)
© China Radio International.CRI. All Rights Reserved. 16A Shijingshan Road, Beijing, China. 100040 |