日本政府は15日の閣議で、環境省の外局として、「原子力安全庁」を設置する方針を決定しました。これは、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、原子力の安全規制を強化し、行政組織を見直すものです。今月中に準備室を設置し、関係法案の作成作業に入り、来年4月の発足を目指しています。
今年3月11日に東日本大震災が発生してから、日本政府の関係行政組織は、多数の中央政府機構を凌ぎ、福島第一原子力発電所の事故を処理しました。日本政府と、事故当事者である東京電力会社が設置した対策本部以外に、経済産業省の原子力安全・保安院、内閣府の原子力安全委員会があります。このほか、文部科学省が放射線量モニタリングを実施しています。原発事故処理の初期段階では、東京電力会社、原子力安全・保安院、内閣官房長官の間で、三方から情報発信がおこなわれるという"興味深い"システムが取られ、公表したデータの不一致などといった恥ずかしい事態も起こりました。
原子力安全庁の設置について、菅直人首相は「原子力安全規制に関する業務を一元化する重要な決定だ」と強調しました。日本政府はこれまで、突発事故の処理に当たっては、独立性の高い委員会を設置することが多くみられましたが、今回は政府部門の「庁」の形をとっています。これに対して、細野豪志・原発担当相は「原発事故のような有事には、官邸との連携を委員会よりも取りやすい。また、新組織が、議会に報告するとともに、原子力安全審議会の意見を聞く義務を持つことで、透明性を確保する」と説明しました。
日本政府が制定した法案によりますと、原子力安全庁の設置は2段階に分けて行われることになっています。まず、経済産業省から、原子力安全・保安院を分離し、内閣府の原子力安全委員会などと統合します。これと同時に、文部科学省の放射線モニタリング部門や国土交通省の船舶用原子炉の規制権などといった業務を原子力安全庁に移管し、500人から600人の組織を立ち上げます。さらに、2012年末までに、現在進められている福島第1原発事故の処理や、エネルギー政策の調整などを踏まえ、原子力安全庁の業務を強化させます。政治的指導力を強めるため、原子力安全庁の長官には、官僚出身者だけでなく、原子力発電所に詳しい民間有識者が起用される可能性もあります。これと同時に、日本政府は原子力安全庁の下で、諮問機関として「原子力安全審議会」を置く方針だということです。
新しく設置される原子力安全庁は、これまで経済産業省が原子力安全管理を行う矛盾を解決できますが、最も小さな省である環境省の実行力や調整力は、未知数と世論はみています。一方で、すでに環境省内では、地球温暖化対策の面において原子力エネルギーに関わっています。新しい組織が、原子力事故の今後の処理で果たすべき役割を発揮できるかどうか、その成り行きをみていきたいものです。
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