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1時間目 イタズラ爺さん・奥田正彦さんのハンコ彫り――「人日立春」、中国現代文学の散歩道~李敬澤「趙氏孤児」(3)
担当:王小燕、斉鵬
【季節のご挨拶】
北京市内最大規模の天然スケート場・頤和園昆明湖のスケート場が先週末にオープンしました。広さは50万平方メートルで、ざっくり東京ドームの10個分以上の面積もあります。これにより、北京の6大屋外スケート場(頤和園、植物園、什刹海、北海、紫竹院、陶然亭)がすべて営業を開始したことになります。しかし、暖冬の影響で湖がなかなか凍らなかったため、例年よりも約3週間遅れての滑り出しです。北京市は、天然スケート場の営業期間は毎年の立春までとしていますので、今シーズンの運営期間はわずか2週間の短さ。史上最短といわれています。また、昆明湖のスケート場として利用できる湖面の面積は、去年は70万平方メートルでしたが、今年は50万平方メートルにまで縮小しました。地球環境の変化がウィンタースポーツに及ぼす影響が懸念されています。
【新コーナー登場!「イタズラ爺さん・奥田正彦さんのハンコ彫り」】
さて、そんな中北京からお送りする今週の番組に、また新コーナーが登場します。タイトルは「イタズラ爺さん・奥田正彦さんのハンコ彫り」。篆刻愛好者で、北京放送リスナー暦30年の奥田正彦さん(東京都)のご協力でスタートするコーナーです。
奥田さんは14年前から、「詩句印」(漢詩から選んだ言葉をハンコに彫るというもの)を作り続け、毎月、その作品を友達や知人にメールで配信しています。今月ご紹介するのは春節にちなんだ漢詩「人日立春」です。なお、読み下し文と現代語訳は、石川忠久(いしかわただひさ)著、『漢詩をよむ・冬の詩100選』(NHKライブラリー)からの引用です。番組でご紹介するにあたり、石川忠久氏のご快諾も得ております。あわせて感謝申し上げます。
気になるコーナー名の由来ですが、前半部「イタズラ爺さん」は奥田さんの自称で、中国のSNS「微博(Weibo)」においても「淘気爺爺愛北京(イタズラ爺さん、北京を愛す)」というアカウントをお持ちです。後半部は、「ハンコ彫りを恰好つけて言ったら篆刻、篆刻とは簡単に言ったらハンコ彫りでしょう」という奥田さんのイタズラっ気のある言葉に由来しています。
このコーナーは月一回、最終週の火曜ハイウェイの一時間目に放送する予定です。今月は、最終週は旧正月で新年特番の再放送があるため、24日の放送となります。
奥田正彦さんから:
"このたび、「爺爺」の拙作を放送にとりあげてくださったことを嬉しく思い感謝しています。
漢詩は難しく、多くの人々に助けられて「詩句印」を14年間作り続けてこられました。
続けられている理由のひとつは、定年退職後北京に留学し、勉強の面白さを肌で感じたことです。そのとき習ったことばの中に「活到老学到老」があります。学問には終わりがないという意味です。
詩文には中国語の奥深さが凝縮されていて、理解は困難ですが、困難なるがゆえに活到老学到老でなければと思っています。"
【現代中国文学の散歩道~李敬澤「趙氏孤児」(3)】
これまでの放送では作家、文芸評論家の李敬澤(り・けいたく)の小説「趙氏孤児」の第1部「王妃の陳情」と第2部「二つの取るに足らないこと」を紹介してきましたが、第3部「少年夷皋と熊の手」はやや長文のため、3回に分けてご紹介していきます。今回はその1回目。王小燕、星和明と斉鵬の朗読でお届けします。
このコーナーは中国文学の翻訳誌『新しい中国文学 灯火』雑誌社の後援により実現したものです。『灯火』は中国で最も権威のある文学雑誌『人民文学』の日本語版として、2015年12月に創刊。これまで全3冊が刊行されています。初回からシリーズでご紹介している小説「趙氏孤児」は、去年3月に刊行した「特別版」に掲載された作品です。翻訳は水野衛子(みずの・えいこ)です。
★第3部「少年夷皋と熊の手」
晋の襄公の崩御で、幼くして王位についた夷皋は15歳の少年となった。わがままで、ありあまる暇とエネルギーにまかせて不良少年の道を驀進していた。史書では、夷皋には二つの罪を犯したとしている。今回はその中の一つ、「権力を笠に金を集め、壁に彫り物をした」の部を紹介する。
★ちょっと難しい用語
①「はるか万里の彼方の英夷の小島で、国王の孫の嫁が妊娠した・・・」=英国のウィリアム王子の妻キャサリン妃の、第一子の妊娠発表(2011年)を指す。
②李小璐(リー・シャオルー)=1981年生まれ。子役出身の中国人女優
③郭晶晶(グオ・ジンジン)=1981年生まれ。中国の女子飛び込み五輪金メダル獲得選手。
④王国維(おう・こくい)=清末民初の学者(1877-1927)。研究分野は文学・美学・史学・哲学・考古学に及ぶ。
⑤忠孝仁義礼智信=儒教が重んじる7つの徳。
⑥永楽宮=山西省にある道教の寺。
⑦曾侯乙墓(そうこういつぼ)=戦国時代初期の竪穴式の墓。
⑧趙盾(ちょうとん):晋の政治家。趙衰の長男。晋で長く政権を執り、趙氏の存在を一躍大きくした。
⑨夷皋(いこう)=晋の襄公が崩御し、その息子で、幼くして即位した新しい国王、晋の霊公。
★第2回の朗読へのお便りの抜粋
【ゲンさん】
音だけでは理解しにくい言葉の説明、内容への道案内が、かゆいところに手が届いて助かります。今回も、この小説の面白さがとても伝わり、楽しんで聴かせてもらいました。
星和明アナウンサーが加わって、登場人物に立体感が出たことも良かったと思います。斉鵬さんの「咳払い」と「ちょっとトイレへ」なんて、作者のとぼけた表現に合っていて笑えました。オリンピック選手だのノーベル文学賞のモー・イエンさんまで登場する紀元前のお話。時空を飛び越える小説の元気のよさが、王小燕さんの溌剌(はつらつ)とした朗読と溶け合っていると思いました。
今は内だ外だ、右だ左だ、米だ水だと争うが、米と水をあわせれば粥になるというような表現に、グイグイと引きこまれました。これなら聴き続けられそう・・・と親しみを感じた2回目の朗読でした。
【背景】
★李敬澤について
1964年天津生まれ。 北京大学卒。中国作家協会副主席、中国で最も権威ある文芸雑誌『人民文学』の元編集長。著名な文芸評論家で、中国の作家たちの尊敬を集めるとともに畏怖される存在でもあります。
幅広いスタイルの作風の作家としての顔もあり、『検証千夜一夜――21世紀初の文学生活』、『文学のために申し開きをする』、『反遊記』、『小春秋』、『理想的な読者へ』などの著書があります。
★「趙氏孤児」について
司馬遷の『史記』にも出てくる史実をもとに、元代の劇作家・紀君祥が元曲として創作した中国の有名な悲劇の一つで、18世紀にはフランスの作家ヴォルテールによって翻案され、ヨーロッパで舞台化された最も古い中国の芝居でもあります。
中国でも繰り返し京劇などの伝統演劇や話劇の舞台、テレビドラマに取り上げられ演じられてきました。近年では、陳凱歌監督が映画化、日本語訳『運命の子』として、2011年に日本でも公開されています。
これら良く知られた「趙氏孤児」は、霊公殺害の冤罪で趙家が将軍・屠岸賈(とがんこ)によって、一家全滅の罪に問われた際、趙家に恩のある公孫杵臼(こうそんしょきゅう)や程嬰(ていえい)らによって助け出され趙盾(ちょうとん)が一人生き延び、やがてその孫の趙武が長じて一家のあだ討ちをするという復讐の物語です。
李敬澤のこの小説はその有名なストーリーのエピローグ、またはスピンオフともいえる内容になっています。霊公と趙盾との確執(かくしつ)に、中国の現代にも通じる諸問題を見出すという、単なる歴史小説を超えた語り口になっています。
2時間目 外国人観光客の誘致で持続可能な発展の道を探る~ドン・キホーテグループJIS社・中村好明社長に聞く
聞き手:王小燕
637万人。
日本政府観光局(JNTO)の発表した2016年の中国大陸からの訪日観光客数です。この数は、訪日外国人観光客の約4分の1を占めています。
こうしたことを背景に、中国人観光客を含めた外国人の訪日観光、つまり、日本のインバウンド事業の開拓に奔走している経営者がいます。
ドン・キホーテグループJIS(ジャパン インバウンド ソリューションズ)社の中村好明社長です。JISはドン・キホーテ社がインバウンド事業に特化した子会社として2013年に設立。今回のインタビューは昨年末、中村さんが北京を訪れた際に収録したものです。
ところで、「インバウンド」が日本国内で脚光を浴びるようになったのは、2003年、政府が掲げた「観光立国」の政策に遡ります。その2年ほど前には、中国人ツアー客による日本観光が本格的にスタート。その後、年を追うごとに日本を訪れる中国人観光客は増え続けてきました。
こうした中、2008年7月、中村さんはドン・キホーテ社内でインバウンドプロジェクトの責任者に就任。今では「訪日中国人観光客の2人に1人が来店している」とも言われるドン・キホーテですが、当時の滑り出しは決して順調ではなかったようです。
「2008年7月、上海、蘇州と南京をまわり、18社の旅行会社と商談しましたが、そのうち、ドン・キホーテのことを知っている旅行社は一社もなかったです」
今は微笑みながら振り返る中村さん。その後、インバウンドにおいて確固たる地位を獲得するまでには、継続的な関係作りとプロモーション、そして、何よりも地域全体を巻き込んでの、共同での行動がものを言わせたと話します。
「ドン・キホーテは今、350余りの店舗が、日本全国にできました。しかし、外国からの観光客は単独の店のためだけにその地方を訪れない。町全体の魅力を提案しないと、来る理由はない」
地域の商店街の多くの店で同時に使える割引カード「ようこそカード」の提案など、多くの取組が成果をもたらしました。
一年365日の中、合計300日余りを国内外の出張で過ごす中村さん。
「私の大学、大学院時代の専攻は公共哲学でした。人口減を背景に、社会の持続可能な発展を実現するのは、定住人口と交流人口の掛け算の力しかないと思います」
精力的な活動の支えを淡々とこう語ってくれました。
今回は、日本のインバウンド事業の現場で活躍のプロにお話を伺います。目下の外国人訪日観光の現状と課題、そして、今後の成り行きについて、中村さんはどう見ているのか。また、経営者として、これから社会に出る大学生に寄せたメッセージも頂きました。あわせてどうぞ。
番組をお聞きになってのご意見、ご感想を riyubu@cri.com.cnまでお寄せください。
【プロフィール】
中村 好明(なかむら・よしあき)氏
1963年、佐賀県生まれ。上智大学出身。2000年㈱ドン・キホーテ入社。広報・IR・マーケティング・新規事業の責任者を経て、08年7月、社長室ゼネラルマネージャー兼インバウンドプロジェクトの責任者に就任。13年7月、㈱ジャパン インバウンド ソリューションズを設立、その代表に就任。
ドン・キホーテグループに加え、日本の国・自治体・民間企業のインバウンド分野におけるコンサル業務、教育研修事業、プロモーション連携事業に従事。日本の地方自治体や企業で、年間約200本の講演活動を行う。
『地方連携』をキーワードに広域範囲の商業施設や観光施設をまとめた委員会活動など業界、業種、ライバル関係を越えた連携活動を啓発している他、フォーラムやセミナーを開催するなど、人材育成にも注力している。
【現在】
観光庁観光立国ラウンドテーブル委員
日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員会委員長
全国免税店協会副会長
みんなの外国語検定協会理事
関西美食ツーリズム推進協議会 観光政策研究会 会長
【主な著書】
•『まちづくり×インバウンド 成功する「7つの力」』(朝日出版社)
•『空室が日本を救う! ―――イノベーティブ企業22...』(ダイヤモンド社)
•『観光立国革命~インバウンド3.0の衝撃! 持続可...』(カナリアコミュニケーションズ)
•『[リアルな会話CD付き]接客現場の英会話 もう...』(朝日出版社)
•『インバウンド戦略 ―人口急減には観光立国で立...』(時事通信社)
•『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦―激安の殿...』(メディア総合研究所)
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