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許嘉璐元中国全人代常務委員会副委員長基調講演

2016-04-29 11:43:31     cri    

 第1回の中日韓公共外交フォーラムの開催は平安・友好・幸福の東アジアを構築するための重要なスタートになると確信しております。ここでは東アジア運命共同体の構築について、私個人の考えを述べさせて頂きます。

 まずは経済・政治・軍事を超えて、文化の視点から東アジアの運命共同体を考えてみたいのです。いかなる時代、いかなる民族、いかなる国家においても、いつの時代になっても、経済・政治・軍事などはいずれも現実主義のものです。しかし、歴史主義の観点から見ると、過去・現在・未来をつなぐものは文化です。人によっては文明という語彙を遣う場合もあります。

 人々は往々にして自分の生活環境や生活エリア、自らの知識構造に拘って物事を見てしまう傾向があります。しかし、このような箍を外して、視野を広げて考えると、人類は今、ともに未曾有の大きな危機、大自然の危機に直面していることがわかるでしょう。過去の危機は大自然が人類に課したものでした。地震、津波、疫病など、いずれも大自然からの危機と言えます。しかし、ここ数百年、人類が直面している危機はほとんど人類自身がもたらしたもので、人為的な危機といえるものです。いま、人類が直面している危機をマクロ的に考えれば、3種類にまとめることができます。

 第一には、衝突と戦争です。これにはテロ襲撃と暴力なども含まれています。いずれも人為的なもので、衝突や戦争を犯したいかなる口実、理由があっても、究極のところ、全ては人類の行為によって起こされた災難と言えるでしょう。 

 第二に、民族・人種・性別の違いによる格差の問題です。貧困の問題もその一つです。これは戦争、テロなどとも直接つながっています。

 第三には、地球環境の悪化問題です。

 この三大危機はいずれも人為的なものです。このような背景の下で、三国を見てみると、三国はともに東洋文化圏にあり、西洋と違って、多くの共通点を持ち、ほとんど似通った道を歩んできました。そして、この共通の道は我々に課題をも残しています。

 まずは日本、そして中国、その後に韓国が、船や軍艦のもたらした西洋文化に触れました。我々は羨望し、恐れ、その力はそれらを学ぶという行動に変容しました。日本は三国で率先的に西側諸国から先進技術を学び、社会の急変が訪れました。それから、韓国と中国も相次いで開放の道を歩みました。もちろん、西側諸国の科学技術や物資より、われわれは立ち遅れていますが、貪欲に西側諸国からのモノを輸入していたため、社会の転換が見られるようになりました。しかし、これまで数千年にわたる人類社会の発展プロセスを見ると、社会の変化は緩やかなものでした。しかし、我々の時代の社会転換は急速に過ぎました。この急速な転換プロセスにおいて、人類の内部関係や人類と自然との関係など、いずれも不均衡に陥り、環境が悪化し、3国の優れた文化は大きな衝撃を受けるようになりました。明治維新以前を思えば、そこに藤原行成、中江丑吉ら、優れた思想家がおられました。しかし、現代の若者たちは、彼らの存在を知っているでしょうか。中国は19世紀の中頃、外来文化を受け入れ始め、こうした波に襲われました。そして40-50年後には、孔子・孟子・朱熹・王陽明などの言説は危機的状況を迎えているとよく言われます。韓国もそれを追いかけるように、その流行に飲み込まれていきました。人々は誘惑性のある舶来文化に魅了され、伝統文化を忘れてしまいました。伝統文化の喪失は自らの根本を忘れ、自らの思想を持つ学者らすら忘れてしまう結果を招きました。

 そうした、我々三国を覆い、若い世代の間に広がっていた空気は、全てがあまり見慣れない、しかし非常に人を惹きつけてやまない外国文化がもたらしたものでした。伝統はもちろん、これまで三国の発展過程において、時代の流れに背くようなこともあります。たとえば、豊田秀吉は16世紀に、朝鮮を占領して中国に占領することを幕府に提案したという記録がありますが、これは決して主流ではありません。三国の歴史の発展の流れにおいて、主流は依然として人類に偉大な精神的価値を残した人物の思想であるのです。

 三国は文化的にも、精神的にも、もっと通じ合うべきなのです。一部のアンケート調査の結果では、国民感情は一時悪くなったという報道もありますが、それは一時的なものに過ぎないと私は見ています。伝統文化の喪失はもっと大きな危機をもたらすものと言えます。そのうち、重要な一つは、人類と自然との関係です。三国は従来自然に対し、警戒心と敬意を持っています。日本の庭園は日本人の自然との関係を十分反映していると思います。韓国も中国も同様です。しかし、社会発展の中では、大自然を過度に消費するようなことがたびたび発生しています。

 三国の文化の共通点のもう一つは、いずれも次世代のことをよく考える点にあります。しかし工業化の波の中で、われわれが次世代にどんな環境を残すかを忘れてしまってはいないでしょうか。

 衝突と戦争については、三国はいずれも衝突と戦争の悲惨な傷痕を残しています。これは周知の事実で、このような傷跡はいまだ存在しています。

 人類の本能は、挑戦に対し、自発的に対応することができます。ここでは、今後の三国協力の大きな前景に対し、いかに挑戦に対応すれば良いのか、私の提案として三つのアドバイスを提起したいと思います。

 まず、伝統の復興です。工業化の道を急がず、これまでの道を振り返ってほしいのです。これまで失ってしまったものを取り戻し、自分の心に照らしてほしいのです。古代の賢人の知恵を改めて拾ってほしいのです。

 次に、発展と向上があります。過去にとどまり、過去に拘るべきではないのです。それには、先人たちの哲学を改めて見直す必要があります。三国サミットの人的・文化の交流を強化する提案に合わせて、文化交流を拡大してほしいのです。三国が時々に陥る、行き詰まりの環境から抜け出して、平和的環境を作ってほしいのです。

 そして、世界に貢献するということです。先ほど発言者の方の話では、経済指標や人口などにおいて、三国は世界で重要な割合を占めていることがわかりますが、現在、世界は様々な複雑な危機に直面しています。このような背景の中で、東洋の文化、東洋の知恵は世界に大きく貢献するべきでしょう。三国共通の価値観を生かして、運命共同体として、世界の危機に直面してほしいのです。いわば、文化の共同体として世界の危機を解決してほしいのです。これはグローバルな注目を集め、三国だけでなく、世界にも大きく寄与すると思います。

 最後に、人的文化の視野から、三国の協力は必然なもので、東アジアの人々の世界中の人々に対する責任ともいえます。この第1回フォーラムをきっかけとして、三国の人々がすでに運命共同体である事実を、文化という顕微鏡とルーペを通して見つめてほしいのです。そして、もっと多くの人々に意識してほしいのです。私たちは、誰からも逃れることはできない、ということを。

 ご静聴ありがとうございました。

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